学校での初仕事2

文字数 1,095文字

「学生に授業を教えるのは、初めてで慣れない部分も多い。分かりにくい所があったら、遠慮なく質問してくれ」
 そう言って、エリスは黒板へと向かう。
「あの、先生」
 生徒の一人が手を上げた。
「どうした?」
「外での訓練はしないんですか」
 エリスは頷くと
「確かに、実戦経験を積むことは重要だ。しかし、君たちには不足している知識も多いだろう。まずは、しっかりと基礎を学ぶ必要がある」
実戦はその後にしよう、と続けた。
 その話を聞いたクロードは、つまらなそうに頬杖をつく。
「また座学かよ」
「仕方ないわよ。それとも、あんた錬成陣ちゃんと書けるの?」
 ミシュナに横目を向けられ
「うっ、うるせー」
 クロードは視線を逸らす。
「では、まずは人が元素を扱うことに必要な仕組みを教える。教科書の――」
基礎的な錬金術の知識だが、シェオールの門から力を借りることで人は元素を扱うことが可能になる。
 ウロボロスを守護する精霊として、イフリート、シルフィード、ノーム、フラウ、ウィル・オー・ウィスプ、シェイド、エントが存在する。
「まずは、火を司るイフリートの錬成陣だ」
 そう言って、エリスは黒板に錬成陣を書き始める。
「専用の道具を利用していないので、この錬成陣には今は何の効果もない。複雑ではあるが、何度も練習して記憶をすることだ」
 クロードは首を傾げながら
「専用の道具?」
 そんなの必要なのか、と紙に錬成陣を模写しながら言った。
「セフィロトの枝よ。うちの商会でも扱ってるもの」
 ミシュナが得意気に答える。
「枝って言われるけど、本当は赤色の鉱石よ。そして、人間の血を吸うの」
「……痛そうだな」
 血を吸われると聞いて、クロードは身を震わせる。
 その話を聞いていたエリスは
「実際は、注射の針を刺すような感じだ。慣れれば、平気になるぞ」
 安心しろ、と続けた。
 クロードは机に伏せながら
「オレは、注射も苦手だよ」
「そうね。あんた、予防接種の時に泣いてたし」
 面白そうにミシュナが笑う。
「うるせー」
 騒がしくしているクロードとミシュナを見て、後ろに座る落ち着いた雰囲気の少年は溜息をついた。
「先生、質問いいですか?」
「君は、アルベルだな。どうした?」
 エリスが聞く。
「古い文献で読んだことがあるのですが、シェオールの門にてウロボロスと接触をした人間は錬成陣を必要としないと聞いています」
 アルベルが真摯な眼差しをエリスに向ける。
「先生は、本当にあると思いますか?」
「……ただのお伽噺だ」
 エリスは肩を竦めた。
「もし、居たとしても死んでいると思うぞ」
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