ライル・フラメルの研究

文字数 1,024文字

「明日から学校、楽しみです」
 エリスが屋敷に戻ると、鼻歌まじりにルルドが食事の用意をしていた。
「予習はしたのか?」
「ええ、エリス様が戻って来る前まで」
「……ふーん」
 エリスは腕を組みながら
「なら、少し問題を出そう」
 ルルドに視線を向ける。
「あまり難しくしないでください」
「エンバー鉱石と、クリマ草、そしてビルカ水を合成すると何ができる?」
 エリスの問題を聞いて、ルルドは苦笑い。
「これは、性格の悪い問題ですね」
「気付いたか?」
 面白くないな、とエリスは肩を竦める。
「エンバー鉱石とクリマ草は、爆発物を作る際の鉄板材料です。しかし、そこに回復効果のあるビルカ水を加えるとなると……これは、オリジナル調合の回復薬と考えた方がよさそうですね」
エリスは鼻を鳴らすと
「正解」
 小さな声で言った。
 ルルドは薄らと笑う。
「フリーの錬金術師は、オリジナルのレシピ持っていますからね」
「私は、このレシピを気に入っている。そこらの回復薬よりは、効果が高い」
 エリスが得意気な表情をした。
「前に一度、商会へ商品化を依頼したがコストが高いと却下されたがな」
「商会は、そうでしょうね。低価格商品が基本ですし」
 ルルドが盛り付けたサラダを、テーブルの中央に置く。
「……そうだ、理事長の秘書が週末この屋敷に来ると言っていた」
「なるほど、ガールズトークですね。部屋の飾りつけは、シンプルな方がよろしいでしょうか。それとも、壁をピンクに塗り替えた方が……」
 真面目に考えているルルドを見て
「いや、そういうサプライズはいらないぞ」
 エリスは首を横に振った。
「ここが、ライル・フラメルの屋敷だから見たいという興味からだろ。それで、君が寝床に使っていた研究室だが……」
 ルルドは頷く。
「あの場に立ち入ることを許可出来るのは、今の屋敷の主であるエリス様だけです。前にここに住もうとしていた方も、ライル・フラメルの研究について探っていたので、彼の屋敷だというのは分かっています」
「……君は、ライル・フラメルと面識はないのか」
 エリスに聞かれ、ルルドは肩を竦める。
「それが、さっぱり。多分、使用人とかだと思いますが」
「その、君自身が……」
 そう言いかけて、エリスは口籠った。
 確実に決定できる証拠が欠けている。
(これは、もう少し時間を置いた方がいい話だな……)
「エリス様?」
「いや、なんでもない。食事にしよう」
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