学園での初仕事

文字数 1,144文字

「はくしゅん」
 ルルドは体を震わせ
「誰かが、噂している気がします」

 屋敷の角部屋に部屋を掃除し、ルルドは必要な荷物を運びこむ。
「ここなら、利便性も高いです」
 そう言って、ルルドは時計を見上げる。
「動いたら、お腹が減りました。自分で作るよりも、買った方が早そうです」
 屋敷の戸締りと済ませ、鞄を持って外に出た。
「やっぱり、アウリオンですね。あそこの揚げパンだけは、やめられません」
夫婦で経営している小さなパン屋だが、一つ一つ手作りで味も抜群。
「エリス様にも、何か買っていきましょうか」
 女性に人気、ロールパンと手書きでアピールしてある。
 ルルドは首を横に振った。
「いやいや、あんな薄情な方は放っておきましょう」
「少し休めば、大丈夫だ」
「そんな状態じゃ無理だよ」
 何やら言い争いをする声。
「あの、どうかしました?」
 ルルドが声をかける。
 奥さんは困った顔をしながら
「この人、腰をやってね」
 ルルドに言った。
 主人は椅子に座ったままの状態で
「こ、これくらい、ううっ……」
 腰を押えている。
 その様子を見て、奥さんは溜息をついた。
「今日は、学校に配達があるんだけどね」
「……学校」
 ルルドはいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「パンの配達って、僕でもできますか?」

♦♦♦

「新しい先生ってどんな人かな」
 桜色の髪の少女が呟く。
 隣の机に座る鳶色の髪の少年は
「こんな奴じゃね?」
 少女に雑誌を見せる。
 その雑誌には屈強な男たちが、揃って肉体自慢をしている。
「これで貴方もムキムキに……って、美しくないわ」
 少女が雑誌を机に叩きつけた。
「ああ、ミシュナのアホ」
「クロード、あんたが変な雑誌しか持ってこないのが悪いのよ。もっとこう、白馬が似合うようなクールビューティって感じの」
 クロードは頭を掻く。
「だいたい、戦闘担当ってくらいだから男に決まってるだろ」
「そんなこと分からないわよ」
 ミシュナは髪の毛の先を触りながら、本を読んでいる金髪の少年に視線を向ける。
「ねぇ、アルベル君はどんな先生だと思う?」
「……興味ない」
 あっさりとした返事。
「やっぱり、アルベル君はクールね」
 ミシュナが頬を赤らめる。
 その様子を、クロードは面白くなさそうに眺めた。
「世の中、大切なのは顔面偏差値だよな」
教室のドアが開く。
「初めまして、今日から錬金戦闘学を担当するエリス・キュアノエイデスだ」
 よろしく頼む、とエリスは生徒の前で挨拶をする。
「……クールビューティ」
「まじか、ゴリラ男じゃない……」
 生徒たちが何やら騒ぎだす。
 その様子を見て、エリスは頭を悩ませた。
(第一印象、悪かっただろうか)
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