屋敷の探検2

文字数 1,083文字

「これより、クロード探検隊を結成する」
「パチパチパチ」
 戦闘に立つクロードの後ろで、ルルドが拍手をする。
「あまり、調子に乗らせるなよ。ただでさえ、アホだからな」
 アルベルが溜息をつく。
「アホとはなんだよ。そう、例えばこの花瓶」
 棚の上に置かれている花瓶を、クロードが指さす。
「中に、地下へと続く秘密のボタンが設置されている可能性が……」
「それは、普通に花瓶ですが……」
 ルルドはアルベルに横目を向ける。
「性格正反対に見えますが、仲が良いのは何かきっかけがあるんですか?」
「……あれが、勝手に突っかかるだけだ」
 アルベルが深い溜息をつく。
「ああ、言われてみれば」
 アルベルと話すのは、敷居が高いらしく他の生徒は遠慮している雰囲気がある。
 しかし、そんな雰囲気を吹き飛ばしてしまうクロードの個性の方が強い。
 ルルドは憐れんだ表情を浮かべながら
「話しかけてくれる人、クロード君しかいませんもんね」
 アルベルの肩に手を置いた。
「……馬鹿にしているだろ」
 アルベルが眉間に皺を寄せる。
ルルドは首を横に振った。
「そんなつもりはありませんよ。だだ、青春だなぁと」
「……年寄りのセリフみたいだな」
 アルベルに言われ
「うーん、同年代と話す機会が少ない影響ですかね」
 引きこもりは良くないですね、ルルドが続けた。
「なあ、この絵。怪しくないか?」
クロードが見ていたのは、深淵の門の隙間から見える一つ目。
 ウロボロスが、ことらの世界を覗いているイメージ。
 複数の画家が模写をしており、絵画としては一般的なものだ。
「……特に、珍しくもないだろう。うちの屋敷にも、飾ってある」
 うちのは有名な画家のだが、とアルベルが続ける。
「額縁がプラスドライバーで外れて、中から隠し扉が……」
 クロードが、かなり飛躍的な妄想をする。
「そんな、設定はありませんよ」
 ルルドが肩を竦める。
 アルベルは窓の外に目を向け
「……暗くなってきたな」
 今にも雨が降り出しそうな雲を見て言った。
「今日は、晴れだって聞いたけどなー」
 クロードは周囲を見渡す。
「な、なぁ、ルルド。電気、つけていいか?」
「はあ、実は……」
 ルルドは頬を掻く。
「昨日から調子が悪くて、お店に聞いたら在庫切れでして……」
「つまり、このまま?」
 先ほどまでは、日光が差し込んでいた。
 しかし、その光は遮られて幽霊屋敷のような雰囲気。
 クロードは肩を震わせる。
「いるんだろ、ここ?」
「ああ、なるほど。幽霊、怖いんですね」
ルルドは納得して、深く頷いた。
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