学園生活２

「エリス先生が住んでるの、あの幽霊屋敷か」
　学生食堂で、クロードが驚きの声を上げる。
「そういえば、父さんから聞いたけど近所の悪ガキが忍び込んで暗闇で人影を見たとか」
　ミシュナの言葉を聞いて
（そういえば、小腹が空いて夜中に食事を作ったことがあったような……）
　ルルドは思い出す。
　そして、肩を竦める。
「ま、幽霊なんていませんけど」
「エリス先生と、一緒に住んでいるお前が言うならそうだろうな。錬金術が発展してるとはいえ、幽霊までは呼び出せないだろうし」
　つまらなそうに、クロードが言った。
「でも、ライル・フラメルの屋敷でしょう。確か、研究していたのって……」
「シェオール門への到達」
　ミシュナの言葉に続いて、アルベルが言った。
　スープを口に含んでいたクロードは、驚いた勢いで咳き込む。
「ぶほっ、お、お前、いきなり出やがって……」
「アルベル君、学食なんて珍しいね。今日は、Ａ定食がおすすめだって」
　ミシュナの言葉に、ルルドは頷く。
「ハンバーグは、美味しいですね。まあ、これくらい僕でも作れますが」
「……話を逸らすな」
　アルベルは深い溜息をつく。
「シェオール門への到達が、何を意味するか解ってるだろう」
「分かりましたよ」
　ルルドは肩を竦めると
「これは、かなり飛躍した意見ですが。シェオール門に到達することができれば、生も死も関係なくなる。つまり、事実上の不老不死が完成する」
　まさに錬金術師の悲願ですね、と続けた。
「ライル・フラメルの屋敷には、何か手がかりがあるんじゃないのか？」
　アルベルが真摯な視線を向ける。
「さて、そんなものは見てませんけど」
　興味なさそうに視線を逸らしたルルドを見て
「例えば、幽霊が出入りする隠し部屋があるとか」
　面白そうじゃないか、とアルベルが言った。
　隠し部屋と聞いて、ミシュナとクロードが目を輝かせる。
「それ、ちょっと面白そう」
「隠し部屋を発見したら、オレたち有名人だな！」
　その二人の様子を見て、アルベルがルルドに視線を向けた。
「俺も興味がある」
「よし、決まりだ！」
　クロードが勢いよく立ち上がる。
「ルルド頼む、エリス先生に許可とってくれ」
「少しだけ、探検させてくれるだけでいいの。もし、見つからなくてもライル・フラメルの屋敷の雰囲気を身近で感じたいっていうか……」
　クロードとミシュナの純粋な視線が、困り顔のルルドへと向けられる。
「……ドナルド君。なかなか、やりますね。二人の性格、分かってます」
　ルルドはアルベルに横目を向ける。
「アルベルだ。俺からも、エリス先生に頼んでもらいたい」
　ルルドは小さく頷く。
「そうですね。こういうのは、人数が多いと盛り上がりますからね」