学園生活

「今日から、よろしくお願いいたします」
　ルルドの簡単な自己紹介が終わり、あっさりと生徒の一員となった。
　エリスは少し疲れた表情をしながら
「えー、仲良くするように」
　アルベルの隣の席に座るように指示。
「編入生、エリス先生の弟子だとよ」
　クロードはアルベルに視線を向け
「お前の優等生伝説もここまでだ……」
　ヒヒヒヒヒ、と物語の途中で退治されるような悪役の笑みを浮かべる。
「ホント、馬鹿ね……」
　ミシュナは呆れて溜息をつく。
「よろしく、ドナルド君」
　そう言って、ルルドが椅子に座る。
「アルベルだが……」
「ああ、失礼。アルベル君、僕のことはルルドでいいですよ」
　アルベルは視線を教科書へと移す。
「……クールですね」
「こいつは、いつものことだぜ」
　気にするなよ、とクロードがルルドに言った。
「それでは、授業を始める」
「それでは、授業を始める」
　それから数時間、エリスによる座学授業が続いた。
　休憩のベルが鳴るのと同時に
「机と同化しそう」
　机に額をつけがなら、クロードが呟いた。
「机と同化するのは、非効率的ですね。どうせなら黒板と同化する方がいいですよ、顔に文字を書いてもらえますから近くで知識を吸収できます」
　真面目な表情で言ったルルドを見て
「え、ひょっとして冗談通じない人？」
　クロードは困惑。
「でも、ルルド君すごいよね。初日なのに、先生の質問にきちんと答えられてるし、さっき授業であてられた時は緊張したなぁ」
　やっと休憩できる、とミシュナが一息つく。
　そして、ルルドの隣の席に視線を向ける。
「アルベル君は、授業終わった途端にとこかに行っちゃうし」
　クロードは肩を竦めた。
「あいつは、いつものことだろ」
　ミシュナは頬を赤く染める。
「そこが、ミステリアスでいいのよ」
　クロードは頭を掻きながら
「女って、変な生き物だよな」
　理解できないぜ、と小さく呟いた。

♦♦♦

「新しく来た奴は、エリス先生の弟子だと聞いた」
　旧校舎の研究室。
「貴方は、知っていたか？」
　暗闇に紛れた人物に、アルベルは語りかける。
「ここに来た時は、弟子は居なかったと思います」
　しゃがれた老婆のような声。
「使用人の噂話を聞いたが、ライル・フラメルの屋敷には幽霊がでるとか」
　アルベルが問いかけると
「ライル・フラメルは、かなり前に隠居するとかなり前に屋敷を売り払ったと聞いていますが、あの天才が簡単に研究を放棄するのか……」
　小さな溜息と共に、思案するような言葉が返ってくる。
「……気になるなら、直接聞いてみたらどうですか。同じ学生の立場なのですから、貴方の方がなにかと動きやすいでしょう」
「……」
　無言のまま、アルベルは踵を返した。