謎の幽霊

文字数 1,162文字

「ち、違うっての。ほら、アルベルの奴がもしかしたら……」
「居るなら、むしろ会ってみたい所だな」
 アルベルは、気にせず先へと進む。
「ま、まじかよ……」
「この先は、研究所です。エリス様が使っているランプがありますので、そこまで我慢してください」

♦♦♦

「美味しい紅茶に、有名店のシフォンケーキ。素敵な要素が揃ってるはずなのに……」
 ミシュナは窓の外に視線を向ける。
「天気は、どんどん悪くなる」
「本当に、急に悪くなったな。屋敷の電気の調子も悪いし、探検に行った三人を早めに探しに行った方がよさそうだな」
 エリスが椅子から立ち上がる。
「もう少し、お話を楽しみたかったけど仕方ありませんわね。研究所の方には、私も興味がありますわ。一緒に行ってもよろしいですか?」
 リアに続いて、ミシュナが手を上げる。
「あ、私も……」
(確かに、客人を待たせるのは良くないな)
 エリスは頷く。
「なら、ランプを持って……」
「それでしたら、良い物がありますわ」
 そう言ってリアが取り出したのは、青色の中に鈍い赤い光が点在する石。
「これは、エトワール輝石?」
 刺激を与えることで、発光するエトワール輝石は電灯として多く使われている。
 しかし、このように赤い光が混ざるのは初めて見た。
『――デ、――ダ』
 急な耳鳴りに、エリスは額を押える。
「先生?」
 不安な表情のミシュナに
「大丈夫、ちょっと耳鳴りがしただけだ」
 エリスが言った。
「珍しいでしょう。私も、知り合いからもらったものですわ」
 暗闇で淡い光を放つ。
「すごい、触ってないのに……」
 驚いて、ミシュナが目を丸くする。
 電灯に使われているエトワール輝石は、触れるなどの刺激を与えることで発光する効果がある。
 長持ちをするが、手間のかかるデメリットだ。
「かなりの素材資料を呼んだつもりだが、まだまだ勉強不足ですね」
 興味深いな、とエリスは続ける。
「さて、そろそろ三人と合流しよう」

♦♦♦

 ピシャン、ピシャン
 薄暗い廊下に、水の音が響く。
「な、なあ、水の音……近くないか?」
 クロードが声を震わせた。
「雨音では? 本格的に降ってきましたね」
 遠くで雷が光っているのを見て、ルルドが言った。
「これは、近くに落ちそうですね」
「や、やめろよ、そういうのは……」

激しい稲光と共に、何かの布が揺れた。
そして、微かに人影が見えた。
アルベルは目を凝らしながら
「おい、今そこに誰か……」
 暗闇に真紅の目が光る。
「……あの」
 抑揚のない声と同時、再び稲光が走った。
 三人の目の前に居た人物は、逆さまに立っていた。
 そして頭に巻かれた包帯のようなものを見て
「幽霊だああああああ!」
 クロードが大きな悲鳴を上げた。
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