第21話

文字数 1,105文字

「余に接触した奇跡の証として、持たせてやったのだ」
青年は鼻をならす。
「世話になった神父を蘇らせようと、必死だったのでな」
 エリスは動揺しながらも
「なら、兄さんは辿りついたのか?」
 エリスは、ゴクリと息を飲む。
「君は、ウロボロスだとでも……」
「その通りですわ」
エリスの問いに答えたのは、本人ではなくリアだった。
「完璧な存在ですわ」
「……この方、元から組んでいましたネ」
 テベットが、眉を寄せる。
「私の仕事は、ウロボロス様をこちらへ呼び出すことですわ」
 リアは不敵な笑みを浮かべる。
「ライル・フラメルの屋敷には、その利用価値が十分にありましたわ」
「……あの屋敷には、何かあると思っていたが」
 エリスは、顎に手をあてる。
「一度開いたシェオール門への、痕跡があると考えることが妥当だな。そして、それを隠すために屋敷が建てられた」
 ルルドが寝ていた部屋は、置くを探れば何か出てきそうなものだが。
(……本人が答えるとは、思えないが)
 エリスは肩を竦める。
「生贄の価値が高いほど、その痕跡は大きくなる」
 事実、エリス達が育った教会は事件の後に閉鎖された。
 原因は、魔物の発生。何が引き金になるか不明だが、そういった儀式を行った後には魔物が集まってくる。
「そうだな。あそこで使われた、賢者の石の純度はかなり高い」
 ウロボロスは、鼻を鳴らす。
 そして、エリスの後方を睨みつける。
「余の目の前から、消えろと言ったはずだが?」
「こちらも、来るつもりはなかった」
 溜息混じりの不機嫌な声。
 エリスは、後ろを振り返る。
「ルルドとアルベル?」
「エリス様、説明したいことは色々ありますが……」
 ルルドはアルベルの方に視線を向ける。
「こっちの、問題の方が大きそうだな」
「……先生、クロエを元に戻してくれる約束をしたはずだ」
 アルベルは、疑いの眼差しをリアに向けた。
「ええ、約束は守りますわ。ウロボロス様が、全てを叶えてくれる」
「ウロボロスが……」
 リアが信仰の眼差しを向ける、長身の青年。
 アルベルは戸惑いの表情を浮かべながら
「それが、魔物を生み出す結果になってもか?」
 リアに問う。
「選ばれなかった人間は、仕方ありませんわ。ウロボロス様の居る場所と、こちらの世界が一緒になることで生と死は消失しますもの」
 リアの答えに、アルベルは眉を寄せた。
「つまり、クロエは選ばれた人間ではないと?」
リアは首を横に振った。
「そうは言っていませんわ。向こうの世界との境目が消失すれば、クロエさんも自分の体を探して戻ってきます。私は、嘘はついていませんもの」


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