第23話

文字数 1,135文字

「ほう、余の慈悲を否定するか」
「私には、神様の考えていることが理解できないだけだ」
エリスは肩を竦める。
「兄さんの体から、出て行ってくれ」
ウロボロスは、不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「ふん、全て貴様の入れ知恵か」
 ウロボロスに視線を向けられ、ルルドは溜息をつく。
「これは、全てエリス様が自分で考えて自分で決めたことです」
「人間の分際で、余に意見するか。この体は、返すつもりはない」
 ピリピリと空気が震えているのがわかる。
『にゃ、やばいにゃ……』
『これは……』
 地と水の精霊が警戒。
「い、いけませんわ。まだ、本調子では……」
 止めようとするリアの手を
「ちょっとした余興も必要であろう」
 ウロボロスは払い退ける。
「この感覚、不味いだろ……」
 アルベルは、ルルドに詰めよる。
「まさか、無策のまま連れてきたつもりはないよな」
「何か、手はあるのか」
 エリスが続く。
 ルルドは溜息をつくと
「お前の、元屋敷だろ。なんとかしろ」
『なーんだ、視てたのバレてたか』
 テベットから、発せられた男の声。
「こ、この声……理事長?」
『やあ、エリス君。彼女は送ってみたら、やっぱりろくでもないことになっていたようだ』
「……ということは、テベットのマスターは」

『そういうこと♪』
 軽い口調で返って来る。
『一体、駄目にするのは仕方ない。三人は、そこで伏せてくれ』
「え?」
「この状況でか?」
 戸惑う、エリスとアルベル。
「相変わらずの、悪趣味だ」
 いいから言うことを聞け、とルルドが両手で二人の頭を伏せさせる。
「人形ごときに何が……」
 距離を詰めてくるテベットを見て、ウロボロスは眉を寄せた。
『ここは、元はうちの屋敷だ。それに、精霊ならこちらにも居る』

「……ここまで、精霊分けたやつはおらぬな」
 ウロボロスは、唇の端を釣り上げる。
『親父が、族除けに敷いていたものが。テベット!』
「了解でス」
 テベットの距離が、更にウロボロスに近づく。
 それを、不穏に感じたリアが先手を打つ。
「ここは、引きますわ。ノーム!」
 暴風。
 一瞬、何が起こったか分からなかった。
 しかし、ものすごい力と力が衝突したのだけはわかる。地面に伏せていなければ、近くに居たエリス、ルルド、アルベルは確実に吹き飛んでいた。
 そうなると中心に居たものたちは―――
「まさか、テベット……」
ユーリスが言っていた、一体だめにする。

 その言葉が、脳裏を過り絶望の表情を浮かべた。
「ゴホッ、ゴホッ……」
 咳き込みながら、アルベルが立ち上がる。
「これは、逃げられたな」
 砂煙が治まった現場に、ルルドは視線を向ける。
 そこには、誰も居なかった。
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