伝説の錬金術師

文字数 1,028文字

エリスは頬を掻く。
「以前は、フリーで仕事を請け負っていた。教師という仕事は初めてで緊張をしている」
「大丈夫ですわ。少しずつ、慣れていきますわ」
 リアが優しく微笑む。
「ところで、エリス君。屋敷の住み心地はどうだい?」
ユーリスに聞かれ
「妙なオプションがありましたが、快適にすごせています」
 エリスが答える。
「そうかい。幽霊が世話でもやいたか」
 ユーリスの妙な言い回し。
 おそらく、ルルドについて何か知っている可能性が高い。
「私があの屋敷を選んだのは、あの大天才と呼ばれたライル・フラメルが使っていたものだと聞いたからです」
エリスは肩を竦める。
「研究所は個人で使う分には、申し分ありません」
「それは結構」
 リアは、エリスとユーリスの顔を見比べる。
「えーと?」
そう言って、ユーシスは机の上の書類に目を通す。
「リア君、これ量多くない?」
「理事長が寝てサボるからですわ」
 今日までに終わらせてください、とリアは呆れ顔で続けた。
 教室へ続く渡り廊下を、エリスとリアは進む。
「私は、薬草学の担当ですの。エリスさんは、確か錬金戦闘学の担当でしたわね」
最近では魔物の凶暴化もあり、生徒たちの自衛手段として取り入れたいとユーシスが新たに提案をした。
(ますは、基礎から教える必要があるか……私と兄に教えてくれた神父様は、かなり説明が上手だったな)
 エリスは思考を巡らせる。
「私たちが力を使うには、錬成陣が必要不可欠ですわ。その点、ライル・フラメルは自由自在に属性を操れたとか」
 まさに天才ですわ、とリアが続けた。
「彼は、人類で初めて門の向こうにたどり着いたと言われている。子供の頃は、お伽噺だと思っていたが」
 リアがエリスの顔を覗き込む。
「今は、信じていますの?」
「まあ、何かは居ると思う」
 エリスは言葉を濁す。
あの事件があった夜――
 なにかが、兄の手を掴んでいた。
(よく思い出せない……)

 リアは目を輝かせながら
「ライル・フラメルが使っていた屋敷、私も興味がありますわ。今度の休日、遊びに行ってもよろしいかしら」
エリスは困った顔を浮かべる。
「多分、つまらないと思うが」
「だだの興味ですわ。では、私は三階ですので」
「その……」
「美味しいお菓子を持っていきますわ」
 強引に押され、エリスは断れなかった。
(ルルドのこと、どうするか……)
 また、頭の痛い問題が増えたとエリスは額を押えた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み