ー赤11ー

文字数 668文字




「心霊写真こえええええ!」


 現像室での作業中にも
動悸は冷めやらぬまま。


「最後に出た写真、
 あれはホンモノだよねー先生」


心霊写真コーナーの最後。
番組自体のラストを飾った写真は
他とは違っていた。


「心霊写真と呼ばれる写真は
 撮影するときの条件だったり、
 現像する時のあれやこれやで・・・
 幽霊じゃないことも多いんだけどね」


普通ではなかった。

異質な。
奇妙な。
尋常ではないような。

一瞬で、毛が逆立つような。
実際、
全身に鳥肌が立ち、
背筋にナニカが走るような・・・


『本能』に訴えるような
恐怖。


「ああいうのが
 本当の
 『心霊写真』て言うんだろうね。
 解説してた人も言ってただろ。

『これは大変だ』とか。

やっぱり あるもんだねー」


空気を緩和しようとしてか
担当教諭も
いつもより
軽めの口調で返してくれる。


TVに映し出された写真。
画面いっぱいのソレに

担当教諭も
ハデに驚いていた。

普段は穏やか。
昼行燈的な
芒洋とした風情もある担当教諭。




「怪奇特集は夏の名物だから
あまり気にしなくてもいいぞ」

「無理無理、
 気になるよ。
 さっきのは怖すぎる。
 先生 引きずることないの?」

「気にしてたら
 写真の現像できなくなるじゃないか。
 ただでさえも
 現像する時、部屋の中
 暗いんだから」

「そっか。
 だからバイトに誘ってくれたのか」



違うから!
と慌てて言う担当教諭。
バカな話に流れるままに
笑いながら話は弾む。

笑っている間
喋っている間は
少しは怖さを忘れていた。

そんな中でも
TVで観た あの写真が
頭をよぎる。

写真そのものというよりも。







拡大された写真。




その奥から
なにかが見ている。



そんな気が。




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