ー赤4ー

文字数 471文字





美大の夏休みは
意外と人気(ひとけ)が多いもの。
講義に(さえぎ)られることもなく
制作作業に没頭できるのだ。

石膏を抱える者。
画材の入った大きなカバンと
キャンバスとイーゼルを手に
うろうろする者。

材木を運搬しているのは
建築科だろうか。

学生も多いが
視界に入る人の中には
学校職員や教諭達もいるのだろう。

初日は特にすることもなかった。

教諭の撮影に付いていき、
飲み物や食べ物を持っていただけ。

大学の庭。
近くの森。
夏の日差しに照らし出される景色は
キレイだった。

写真の話。
教諭の本業である
カメラマンとしての話。

たくさんの話をした。

教諭と生徒というより
同じく写真を撮るものとして。
芸術としての写真の話。
真摯に、楽しく。

歩く中、
小さな池と鳥居も見えた。
学校よりも年月を感じるが
由来は教諭も知らなかった。

夏休み明け、
土地の歴史に詳しい教授に
聞いてみよう。

他愛もない会話。
時折
立ち止まり
撮影。

歩き、
撮影。

他愛もない風景を切り取り
見る者の心を
如何に掴むか。

陽光の陰りを感じて
学校まで戻った。

撮影と称した
森の中の散策。

長い時間歩いていた。

心地よい疲れを感じる体。

気持ちは
やたらと高揚していた。









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