ー赤12ー
文字数 336文字
室内はすれ違うには少々狭い。
しかし設備は一式揃っていた。
大伸ばし用壁面投影スペースもきちんと確保された壁。
普段、金のない学生らしく
自宅アパート内の
『押し入れ暗室』での作業を余儀なくされる身としては
夢のような環境だ。
特に浄水設備と廃液保存設備。
暗室の暗室たる遮光設備。
流し部分は市販のステンレスなどの金属製ではなく、
塩化ビニル樹脂製だった。
これなら現像の際の薬品で腐食する心配もない。
「どこかの研究室で使っていた中古も多いから
その分 厳重な暗室になったと思うよ」
これから著名となる可能性を秘めた写真家へ、
応援というなの投資として
これ以上ない設備だった。
暗室用換気扇が
授業の時よりもやたら耳についた。
いつもと違う気がした。