ー赤24・・・回顧と懐古・締ー

文字数 847文字



 



他に当時を知る関係者は
すでに彼岸の彼方に渡る人ばかり。
聞くことは出来ない。


語り部となった彼自身が
高齢と言うべき年齢であり、
唯一、
最期の人となる。



高齢の彼が二度観た
異なる結果の
『夏の怪奇特集』と題した番組は
放送されたという記録がない。
古い時代のTV番組で
単に記録から(こぼ)れ落ちたとも
考えられる。



高齢の彼、から聞く話では
一度目と二度目に紹介された写真は
全く違うモノだった。

 
彼の話す内容は
たぶん辻褄が合っていない。

否定する要素もない。

『この話』
語る、内容自体が
呪物となって記憶に留まり続けた。


よく長い時間を

と思う。


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何を持ち帰るとも、
何が大丈夫とも言わなかったが
語り部となっていた
高齢の彼には伝わったようだ。

「ありがとう」
 
別れ際に
深々と頭を下げる高齢の彼。
その声に重なって
若い違う声が聞こえた。

「 」

ように目を逸らしたが
確認はした。

も、確認したことだろう。
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最寄り駅のホーム。

に電話を掛けた。

小銭がもっとあると思っていたのに。

足りるかな?

公衆電話が
陽に照らされて熱くなっていた。




碓井(うすい)です。
 今、駅です。
 帰ります」

碓井(うすい)って どっちだ。
 ハゲかハルか」

「ハルだよ!
 全部 回収してきた。
 今 向こうの駅で・・・」

「判った!」

 ガチャン!

それだけで電話を切られる。

小銭が少ないのもお見通し、か。



電話の向こうからも
セミの声が聞こえていた。

さあ、帰ろう。

駅に着けば
きっと

が迎えに来ている。

何も言わなくてもいい。

はいつでも

のだ。


汽車が来るまで
売店で買ったアイスキャンデーを食す。

うん、美味いっ。

真夏の日差しの中に
セミの音が一際響く。

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呪物と成り果てた『話』は
回収した。


赤い目は解き放たれたままだ。













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