ー赤22

文字数 844文字







 写真の担当教諭は
 いない。



 夏休みに入る直前、
 交通事故で死んだ。
 建築科の教諭が
葬儀に出ている。




 ・・・夏休みに
 一緒に過ごしていた担当教諭は
 誰だったのだろう。



 散策の折に撮った写真。
 
確かに
 担当教諭の撮影した
 写真は残っていた。
 感光して現像は出来ない。
 最期のフィルムだけが残された。



 担当教諭の荷物を片付けようと
 現像室に入り、発見した。
 
 
 仲が良かった建築科の教諭。
 寂しそうに見えたのだけは
 覚えている。
 

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 その日は
 診療所にお世話になることになった。
 医者がTVを貸してくれた。

 『夏バテで』
 表向きの診断は そうなった。
 
 「まだ学校を使うなら
  ここから通うか? 」
 
 診療所の医者は
 そんなことを言う。
 
「俺も通うから
 一緒に そうするか!」

 努めて明るく
 建築科の教諭も言う。

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どう返事したのか覚えていない。


落ち着いたら
建築科の教諭を手伝って
片付けをすることにした・・・
かも知れない。

特に断る理由もなく。


診療所の医者も
写真の担当教諭の死を知っていた。

慕っていたであろう教諭の死に
他の生徒以上にショックを受けていて。

そう想ってくれたのか、
あれこれ気遣ってくれていた様に思う。


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 建築科の教諭と一緒に食事した。
 この時食べた素麺(そうめん)
 やたら美味かったのを覚えている。


 一番奥の部屋に
 建築科の教諭の分のベッドも持ち込み。

 「なんだか 
  キャンプみたいで楽しいな 」

 写真の担当教諭の話題は出さない。
 夏休みを楽しく過ごそう!
 建築科の教諭の気遣いは
 悪くなかった。
 
 写真の担当教諭に誘われて・・・
 建築科の教諭は
 話を否定しなかった。

 教諭の死は
 まだ信じられない。


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