rain sound-19

文字数 1,235文字

―◆―

 11時からの劇部の公演を見に行った。というより郡司先生に学①を追い出された。それなりに静かで座れる所…と思って周りを見ていたら、劇部のポスターがふと目にとまった。体育館で行われる公演なら座る場所もあるだろうし。
 劇はオーソドックスな「ロミオとジュリエット」をやっていた。ずいぶんはしょってあるようだけど。
 客の入りは良いとこ3割くらい。このところの雨のせいで涼しかったし、暗くなっているのは眠気を誘う。

 …ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?
 ……どしてかなーと思いながら朱夏の意識は急速に薄れていった。でもこの舞台なんか変だ…
 ………はっ。寝落ちしてた。制服の上に出来たシミをハンカチで拭きながらステージを見る。
 あれ?さっきからジュリエット見てないような。舞台上にいるロミオがジュリエットに話しかけると、舞台裏からジュリエットの声が応える感じだ。
 なるほどね、と朱夏は思い当たった。
 ロミオの一人芝居と化しているけれど、まあ、これはこれで良いのか。劇部の機転に拍手だ。
 なんとか最後まで劇は進み、幕が下りた。最後のシーンだけはさすがにジュリエットいたけど。時間は12時05分で、そろそろお昼が恋しい時間だった。
 学①にもどって焼きそばを食べようと席を立ったとたんに、幕の内側から人が倒れるような大きな音が響いた。悲鳴も上がる。
 朱夏はちょっと興味をそそられたけれど、何も出来ることはないと考えて、その場を立ち去った。
 体育館から外に出るとすこしひんやりとした。まだ雨は上がらない。
 学①に戻りながらいくつかの教室を覗く。
 お化け屋敷は学年ごとにあったから3コはあるはずなのに、3年生の場所も人があふれて並んでいた。
 ヒョコッと7組の教室を覗くと、待合の椅子に何人かが座っている。小学生らしき女の子もいた。
「朱夏。どうしたの?」
「さっき劇部見て来たとこ。結構盛況だね」
「そう? 私たち何もすることなくって」
「咲、さっきはありがとう」
「いいよ。それよりあれでよかったの?」
「碧子と分けた」
「ああ、みどり大変そうだよ。さっきも実行委に連れてかれた」
「また? 今度も釣り堀関係で?」
「あはは。そうかもね」
「子どもが落ちたとか?」
「1年生の縁日のヨーヨーつりでプールに落ちた子がいたって聞いたけど。ウチはホラ。とりあえず男子が見てるから、まだない」
「1年生の縁日かぁ」
「面白かったよ。ホラ、これ。射的やってきた」
 咲が広げた袋には雑多なものが入っている。
「私もあとで行ってみる。ヒマなら来てね」
 バイバイと手を振って咲と別れた。
 廊下ってこんなにも狭かったのかと感じるほど人であふれかえっている。

 6月26日 文化祭二日目 雨 午後12:13分 ロミオの演者は1名。
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登場人物紹介

龍蔵寺 朱夏(りゅうぞうじ しゅか)

図書委員会所属の高校3年生

愛称は【あか】


誕生日は11月18日


松下  碧子(まつした  みどりこ)

文化祭実行委員会所属の高校3年生

朱夏のクラスメート

色々と動じない性格

愛称は【みどり】


誕生日は2月27日

咲(さき)

朱夏のクラスメートで、高校3年生

好きな食べ物はノドグロ

スカートは膝丈!


誕生日は5月8日

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