rain sound-17
文字数 905文字
―◆―
少なくとも釣り堀は他のクラスに比べれば人がいるように見えた。
常に周りには6~8人がいたし、教室の中にも列があるっぽかった。
ただ、生き物を遊びにするのはいかがなものかと思う。
学①のベランダからは釣り堀の様子がよく見えるので古本市のお客さんがいないときはそこで下を見ていた。
「しゅーかー、やるー?」
朱夏の姿を認めた咲が下から誘っている。
「いいー。それより頼まれてくれない?」
「何をー?」
咲が朱夏の真下に来る。
「これ、家庭科部の食券なんだけど、適当に買っておいてくれない?」
「おっけ。なにか欲しいものある?」
「焼きまんじゅうだけ。あとは適当で」
「りょーかい」
「じゃ、行くよ」
朱夏はポケットを探って消しゴムを取り出した。食券に包んで下に落とす。
ナイスキャッチ。下から咲の声が響く。咲は朱夏に手を振ると中庭に出ている家庭科部のテントの方に走っていった。
『すいません』と呼ばれたので急いで教室に戻った。
ちょっと背の高い男の子が本を持ってポツンとレジの前に立っている。
出されたのは『失われた時を求めて』。裏表紙をめくって値付けを確認すると値札がない。
「申し訳ありません。これはどの山から取ったものでしょうか?」
「あそこだけど」
除籍した本の山ではなかった。ならば値札が必ずついているはずなのに。
もう一度確認するけれど、やっぱりついていない。
「あのう…… ダメなんですか?」
「え…… いえ、大丈夫です」
郡司先生はいない。――ま、いいか。
「これは図書館で除籍した本だと思いますので、無料でお持ち下さい」
「タダってこと?」
「はい、どうぞ」
「……ふぅん」
男の子は持っていたバッグに本をしまうとちょっと頭を下げて出て行った。
正直なところ少し嫌な予感がしていた。ここから何かが始まるような、胸がもやもやするような、そんな予感が。
6月26日 雨 文化祭二日目 午前9:03分 首をちょん切られたてるてる坊主3つ
降水確率は何%から傘をもってゆくべきなのだろう。
少なくとも釣り堀は他のクラスに比べれば人がいるように見えた。
常に周りには6~8人がいたし、教室の中にも列があるっぽかった。
ただ、生き物を遊びにするのはいかがなものかと思う。
学①のベランダからは釣り堀の様子がよく見えるので古本市のお客さんがいないときはそこで下を見ていた。
「しゅーかー、やるー?」
朱夏の姿を認めた咲が下から誘っている。
「いいー。それより頼まれてくれない?」
「何をー?」
咲が朱夏の真下に来る。
「これ、家庭科部の食券なんだけど、適当に買っておいてくれない?」
「おっけ。なにか欲しいものある?」
「焼きまんじゅうだけ。あとは適当で」
「りょーかい」
「じゃ、行くよ」
朱夏はポケットを探って消しゴムを取り出した。食券に包んで下に落とす。
ナイスキャッチ。下から咲の声が響く。咲は朱夏に手を振ると中庭に出ている家庭科部のテントの方に走っていった。
『すいません』と呼ばれたので急いで教室に戻った。
ちょっと背の高い男の子が本を持ってポツンとレジの前に立っている。
出されたのは『失われた時を求めて』。裏表紙をめくって値付けを確認すると値札がない。
「申し訳ありません。これはどの山から取ったものでしょうか?」
「あそこだけど」
除籍した本の山ではなかった。ならば値札が必ずついているはずなのに。
もう一度確認するけれど、やっぱりついていない。
「あのう…… ダメなんですか?」
「え…… いえ、大丈夫です」
郡司先生はいない。――ま、いいか。
「これは図書館で除籍した本だと思いますので、無料でお持ち下さい」
「タダってこと?」
「はい、どうぞ」
「……ふぅん」
男の子は持っていたバッグに本をしまうとちょっと頭を下げて出て行った。
正直なところ少し嫌な予感がしていた。ここから何かが始まるような、胸がもやもやするような、そんな予感が。
6月26日 雨 文化祭二日目 午前9:03分 首をちょん切られたてるてる坊主3つ
降水確率は何%から傘をもってゆくべきなのだろう。