rain sound-22
文字数 715文字
―◆―
「あかー。帰ろ」
「ねぇ、今日って遅刻いたっけ?」
朱夏は書きかけの学級日誌を指さした。
「え…誰もいなかったと思うけど…」
「ありがと」
朱夏は遅刻欄になし、0名と記入した。
「先に自転車置き場で待ってる」
碧子が歩き出す。
朱夏は机の脇にかけてあるリュックを持ち上げるとペンケースを放り込んだ。
廊下に出るとガラス窓のあちこちに真新しいセロハンテープの跡が残っている。お祭りの残りかすだ。
特段に思うことはない。
朱夏にとってあの時間は来るべくしてやってきて、過ぎ去るべくして過ぎ去った時間だ。
例えるならそれは定期考査に似ている。あらかじめ日時とスケジュールが決まっていて、それに従って始まって終わる。自分はその通りにこなすだけ。それだけだ。
次は定期考査の後に球技大会が予定されている。これもいつの間にかやってきて、決められた競技に早く負けたいと思いながらも、少しだけ負けたら情けないなぁとかも感じて参加して、順位が発表されて終わるのだ。
「失われた時を求めて」が売り物でなく、郡司先生の私物だったように。
そうやって日々が過ぎていく。
青春の苦さを感じる間もなく。
パコンと後ろからはたかれた。
「あか。なに哲学的な何かを口走ってんの」
「碧子!? なんで?」
「あかがこれ忘れてくから」
碧子の右手には学級日誌がある。朱夏の右手には数学のノートがある。
「あれ?」
「文化祭ボケも大概にしなよ」
碧子が先に歩き出す。その背中を朱夏が追いかける。
6月30日 晴 文化祭終了から三日後 快晴と晴の違いは見上げた空の雲の量
「あかー。帰ろ」
「ねぇ、今日って遅刻いたっけ?」
朱夏は書きかけの学級日誌を指さした。
「え…誰もいなかったと思うけど…」
「ありがと」
朱夏は遅刻欄になし、0名と記入した。
「先に自転車置き場で待ってる」
碧子が歩き出す。
朱夏は机の脇にかけてあるリュックを持ち上げるとペンケースを放り込んだ。
廊下に出るとガラス窓のあちこちに真新しいセロハンテープの跡が残っている。お祭りの残りかすだ。
特段に思うことはない。
朱夏にとってあの時間は来るべくしてやってきて、過ぎ去るべくして過ぎ去った時間だ。
例えるならそれは定期考査に似ている。あらかじめ日時とスケジュールが決まっていて、それに従って始まって終わる。自分はその通りにこなすだけ。それだけだ。
次は定期考査の後に球技大会が予定されている。これもいつの間にかやってきて、決められた競技に早く負けたいと思いながらも、少しだけ負けたら情けないなぁとかも感じて参加して、順位が発表されて終わるのだ。
「失われた時を求めて」が売り物でなく、郡司先生の私物だったように。
そうやって日々が過ぎていく。
青春の苦さを感じる間もなく。
パコンと後ろからはたかれた。
「あか。なに哲学的な何かを口走ってんの」
「碧子!? なんで?」
「あかがこれ忘れてくから」
碧子の右手には学級日誌がある。朱夏の右手には数学のノートがある。
「あれ?」
「文化祭ボケも大概にしなよ」
碧子が先に歩き出す。その背中を朱夏が追いかける。
6月30日 晴 文化祭終了から三日後 快晴と晴の違いは見上げた空の雲の量