第20話

文字数 380文字

 そこには、ひたすら自分の愛妻家ぶりばかり書かれてあり、妻の顔や名前は一切伏せられていたが、
「妻は、今時珍しい良妻賢母タイプ。こんな素敵な人が僕と結婚してくれたのだから、30過ぎまで独身を貫いて本当によかった」
 そのようなことばかり、毎日飽きもせず綴られてあるのだ。
 彼が函館に来た日の前後まで遡ってみたが、その頃は、特に何の投稿もない。
 最近の投稿には、
「こんな惚気の投稿してること、実は妻には内緒です(笑)」
 そんなことまで書いてあったが。
 もう、絶句である。
 確かに、私は佐分さんに結婚しているのか尋ねなかった。
 彼も尋ねなかったが、私の、一人であちこち転々とし、今はホテル暮らしをしている、などという言葉から、独身か、結婚していても別居中であると判断したのだろう。
 大阪からわざわざ飛行機で函館まで来たということに、私は勝手に彼の“本気”を感じていた。
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