第21話

文字数 363文字

「俺…初めて会った時から、麻倉さんって本当にいい女だなって思ってたんだよ」

「ずっと、こうしたかった」

「これほど本能的惹かれた女性は、他に居ない…」

 確かに、彼はそう言った。
 しかし、好きだとは一言も言われなかった。

「あはは…」
 一人の部屋で、乾いた笑い声が出る。
 佐分さんは、今時珍しい良妻賢母の妻を愛しているとのこと。
 しかし、恐らく、妻の出産の前後で欲求不満だったのだろう。
 そんな時、私からのメッセージを受け取った。
 函館と大阪なら、距離もあり、今は共通の知人もいないのをいいことに、私をターゲットにしたのだろう。
 まさにゲス野郎だ。
 これまで付き合った男の誰よりもクズだ。

 最愛の妻を平気で裏切って、函館まで飛行機で往復してまで私を抱きに来たなんて、上等じゃないか。
 本能で惹かれただの、いい女だの、都合のいい言葉だ。
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