第17話

文字数 338文字

「ずっと、こうしたかった」
 佐分さんはそう言って、全身にキスを落とす。
「これほど本能的惹かれた女性は、他に居ない…」
 そう言うけれど、私は好きだと言って欲しい。
 しかし、言えないまま、まるで初めてのように、されるがままになっていた。

 行為が終わったあとも、好きだと言いたかったし、言って欲しいと思って、そっと佐分さんの唇に触れてみたが、
「最高だったよ。想像以上に」
 優しい眼差しでそう言われたので、何も言えなくなってしまう。
「なんだか、花束みたい」
 そう言って微笑み、乱れた髪を撫でられた。
 あまりにも私らしくなく、ただの大人しい女になってしまう。
 よかったとか、悪かったとか、そういうことは特に思わず、10年もの片想いが、呆気なく実ったことが信じられなかった…ただそれだけ。
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