夜景

文字数 361文字

ビルの間のアスファルトに
冷たい雨が降り落ちて
空想が現実に呼び戻される
ビニール傘は無数の雨をはじき返して
きっと疲れているかもしれないと
曖昧な暴力の記憶を思い返しながら
駅へと向かって行った
高層階のレストランには
ピアノの音が響いて
目の前にいるあなたが
薄暗い光に照らされている
このままどこかへ行こうかと
話を振ってみたものの
まだ雨は降り続いて
記憶が時々蘇る
あなたはきっと雨を受け止めて
別のものに変えているかもしれない
過ぎていく視線の束が
静かな憎しみに変わった日
それは食事の最中のことだった
空は分厚い雲に覆われて
遠くのビルの明かりが
忙しなく脳を刺激している
うっすらとした煙草の煙が
身近にいる人の体に染みついて
目には涙がにじんだ
あなたとはきっとどこかで出会うかもしれない
その時はきっと晴れていて
そんなことを思いながら
タクシーを呼び止めた
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