河原

文字数 333文字

薄汚れた犬にも
月の淡い光が照らす
そんな段ボールの中にも
僅かな優しさが含まれている
視線は果たして
僕を排除しようとしているのか
川の水が流れていく
道路の街灯の光に辺りが照らされている
電信柱の影が
河原に映っていた
緑色の雑草は
少し夏の夜の風に揺れている
あの日、感じた理由のない憎しみも
こんな狭い風景の中に
穏やかに溶けて行こうとしていた
空には暗い色の雲が浮かぶ
あなたは今、何をしているんだろう
僕のことを考えていたとしたら
いいのになと思う
暗い夜の中にも
小さな希望の光があるような気がして
それは見当違いな夢想に過ぎないかもしれないけれど
河原には誰もいない
何もわからない気がした
でも探すこともできないような
だから小石を拾い
川に向かって投げた
ぽちゃんと音がした
そこには願いが含まれている
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