線香花火

文字数 312文字

夜の中の淡い沈黙
隣にしゃがむあなたの声は
悲しい月の光のように
穏やかに消えていった
バチバチと火種が燃え
火花が赤く飛び散る
夏の熱気が辺りを包み込み
物悲しい涼しい風が吹いた
今年の夏も終わりに近づく
毎年、切なさをまとい
この季節はやってきた
暑さに憂鬱になる日もあったが
実際はそれすらも過ぎてしまえば
少しの懐かしさも感じる
僕は珍しくあなたに
本音を話していた
無意識の中に
時間だけが過ぎていく
ぽとりと火種は落ち
新しい線香花火に火をつけた
あなたの顔が
火花の淡い光に照らされている
僕は空を見上げて
星を見ていた
今日はあなたとの別れの日かもしれない
僕は東京に行く
ビルの立ち並んだ街は
僕に何をもたらすのだろう
いつかあなたのことも
忘れてしまうのだろうか
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