観客席評論家面
文字数 2,256文字
「~~!」
「ありがとうございました! 皆さん、今一度盛大な拍手をお願いします!」
「~~~!」
司会の言葉に観客が応える。
「凄い熱気ですね……」
客席にいる爽が感心する。
(去年は参加してなかったから知りませんでしたが、キャンプファイヤーの演芸大会、これほどまでに盛り上がるのですね……わたくしも微力ながら宣伝させて頂いたとはいえ、ここまでお客さんが集まるとは……予定の空いている生徒はほぼこの会場に集まっているのではないでしょうか?)
「~!」
(実行委員の方は簡単な出し物だなんておっしゃっていましたが、とんでもない。おどろくべきハイレベルな演目が続いています。特に先ほどのイリュージョン……まさか江の島を消したかのように見せるとは……)
爽が内心舌を巻く。司会が声を上げる。
「さあ、お待たせしました! 続いては彼らの登場です!」
「きゃ~!」
「うおおっ!」
女子生徒たちの黄色い歓声と男子生徒たちの叫び声が交錯する。
(やはり注目株はこの人たち……人気モデルがほぼプライベートで活動している、いわゆる“幻のバンド”のライブが生で見られるというのですから、観客の皆さんのこの興奮ぶりも頷けるというものです……)
「『四神』の登場だ‼」
「~~~~!」
ステージ上に現れた四人の姿に観客のボルテージは早くも最高潮に達する。
「……!」
位置につき、楽器を準備すると、わずかに間を置いて、四神は演奏を始める。
(いきなり曲に入った⁉ なるほど、挨拶代わりというわけですか……)
「~♪」
(立て続けに二曲目に⁉ 息を突く暇もないとはこのことですね……!)
「~~♪」
(さらに三曲目⁉ ここまでMCを一切入れないとは……)
怒涛の構成に爽は驚く。
「~~~~~!」
観客もすっかり大興奮な状態である。
「あ~四神だ……どうもありがとう」
三曲目を終え、ボーカルの飛虎が語り始める。
「きゃあ~!」
「うおおおっ!」
「今日は最高の夜にしようぜ! 最後までついてこいよ!」
「~~~~‼」
飛虎がそう叫ぶと、四神は四曲目に入った。爽が内心再び舌を巻く。
(簡単な挨拶のみ⁉ なるほど、自分たちの音楽に余計な言葉は要らないということですか。自信の表れというやつですね……)
「~~~♪」
(その自信を支えているのは、なんといってもこの卓越した演奏力! 人気モデルの趣味のレベルを超越しています!)
「あのドラムすげえな!」
「ああ、体がデカいからか、迫力があるぜ!」
(違いますね……ドラムの津築玄道さん……確かに相撲部だけあって、がっしりした体格に目を奪われがちですが、そこからは想像も出来ないほど、繊細かつ緻密なドラミングでバンドの演奏をしっかりと下支えしている……。まさしく“縁の下の力持ち”ならぬ“皆の後ろの太鼓持ち”!)
爽は腕を組んで頷く。
「~‼」
(ドラムセットとがっぷり四つに組んでいる! そして、時折見せるぶちかましに、オーディエンスは早くも土俵際です!)
「ベースの娘、かわいいよね~」
「ね~一生懸命演奏していて、ほんとかわいい~」
(それも違いますね……ベースの中目雀鈴さん……あんなファンキーなベースをこの島国の片隅で聞けるとは……! もちろん懸命に演奏しているでしょうが、良い意味で力が抜けていて自己主張し過ぎない演奏スタイルは周りを絶妙に引き立てている! 左利きのベーシストというのも個人的には渋いですね!)
爽は腕を組んで深く頷く。
「~♪ ~♪」
(あの絶妙かつ独特なリズム感! あれは少林寺拳法部で培ったものでしょうか? そして、時折みせるキュートさにオーディエンスは失神寸前です!)
「やっぱあのギターだろう!」
「ねえ、カッコいい!」
(いえ、それも違います……ギターの神谷龍臣さん……恰好いいことは否定しませんが、なんといってもあのテクニックと表現力! 信じられないような早弾きを見せたかと思うと、次の曲ではメロディアスな演奏をしっかりと聴かせる! 普段のエキセントリックな人柄がこの場では上手く作用しています!)
爽は腕を組んで深々と頷く。
「~~♪ ~~♪」
(ボクシング部らしい、激しい音のラッシュ! 凄まじい猛攻にオーディエンスはノックアウト目前です!)
「そうは言っても……」
「ボーカルが素敵~♡」
「イケメン~♡」
「悔しいが、それは認めざるを得ないな……」
(いいえ、それも違います……ボーカルの日比野飛虎さん……もちろん、ルックスの良さは言うまでもありませんが、それに負けない歌唱力とステージ上での存在感……! 激しいロックナンバーから甘いバラードまで幅広く歌いこなす! 多くの人の注目を一身に集めている……これが……圧倒的なまでの“カリスマ”!)
爽は腕を組んで深く強く頷く。
「おらおら! 江の島海岸、そんなもんか~⁉」
「きゃああ~!」
「うおおおおっ!」
飛虎が観客を煽る。観客もそれに応える。
(会場を一つにしてしまうこの力強さ……! これも空手部で鍛えた成果でしょうか? オーディエンスはもはや気絶者が続出しそうです!)
「これで終わりだ! ドラム! 津築玄道!」
「! ! !」
「なんか言えよ! ベース! 中目雀鈴!」
「~~♪ ~~~♪」
「だからなんか言えよ! ギター! 神谷龍臣!」
「あの時みたいに最高の夜だったぜ!」
「どの夜だよ⁉ ボーカルは日比野飛虎! 『四神』だ! またどこかで会おうぜ!」
「~~~~~‼」
(良い音楽を聴かせてもらいました。久々に体が熱くなりましたよ……)
爽は腕を組んでゆっくりと噛みしめるように頷くのであった。
「ありがとうございました! 皆さん、今一度盛大な拍手をお願いします!」
「~~~!」
司会の言葉に観客が応える。
「凄い熱気ですね……」
客席にいる爽が感心する。
(去年は参加してなかったから知りませんでしたが、キャンプファイヤーの演芸大会、これほどまでに盛り上がるのですね……わたくしも微力ながら宣伝させて頂いたとはいえ、ここまでお客さんが集まるとは……予定の空いている生徒はほぼこの会場に集まっているのではないでしょうか?)
「~!」
(実行委員の方は簡単な出し物だなんておっしゃっていましたが、とんでもない。おどろくべきハイレベルな演目が続いています。特に先ほどのイリュージョン……まさか江の島を消したかのように見せるとは……)
爽が内心舌を巻く。司会が声を上げる。
「さあ、お待たせしました! 続いては彼らの登場です!」
「きゃ~!」
「うおおっ!」
女子生徒たちの黄色い歓声と男子生徒たちの叫び声が交錯する。
(やはり注目株はこの人たち……人気モデルがほぼプライベートで活動している、いわゆる“幻のバンド”のライブが生で見られるというのですから、観客の皆さんのこの興奮ぶりも頷けるというものです……)
「『四神』の登場だ‼」
「~~~~!」
ステージ上に現れた四人の姿に観客のボルテージは早くも最高潮に達する。
「……!」
位置につき、楽器を準備すると、わずかに間を置いて、四神は演奏を始める。
(いきなり曲に入った⁉ なるほど、挨拶代わりというわけですか……)
「~♪」
(立て続けに二曲目に⁉ 息を突く暇もないとはこのことですね……!)
「~~♪」
(さらに三曲目⁉ ここまでMCを一切入れないとは……)
怒涛の構成に爽は驚く。
「~~~~~!」
観客もすっかり大興奮な状態である。
「あ~四神だ……どうもありがとう」
三曲目を終え、ボーカルの飛虎が語り始める。
「きゃあ~!」
「うおおおっ!」
「今日は最高の夜にしようぜ! 最後までついてこいよ!」
「~~~~‼」
飛虎がそう叫ぶと、四神は四曲目に入った。爽が内心再び舌を巻く。
(簡単な挨拶のみ⁉ なるほど、自分たちの音楽に余計な言葉は要らないということですか。自信の表れというやつですね……)
「~~~♪」
(その自信を支えているのは、なんといってもこの卓越した演奏力! 人気モデルの趣味のレベルを超越しています!)
「あのドラムすげえな!」
「ああ、体がデカいからか、迫力があるぜ!」
(違いますね……ドラムの津築玄道さん……確かに相撲部だけあって、がっしりした体格に目を奪われがちですが、そこからは想像も出来ないほど、繊細かつ緻密なドラミングでバンドの演奏をしっかりと下支えしている……。まさしく“縁の下の力持ち”ならぬ“皆の後ろの太鼓持ち”!)
爽は腕を組んで頷く。
「~‼」
(ドラムセットとがっぷり四つに組んでいる! そして、時折見せるぶちかましに、オーディエンスは早くも土俵際です!)
「ベースの娘、かわいいよね~」
「ね~一生懸命演奏していて、ほんとかわいい~」
(それも違いますね……ベースの中目雀鈴さん……あんなファンキーなベースをこの島国の片隅で聞けるとは……! もちろん懸命に演奏しているでしょうが、良い意味で力が抜けていて自己主張し過ぎない演奏スタイルは周りを絶妙に引き立てている! 左利きのベーシストというのも個人的には渋いですね!)
爽は腕を組んで深く頷く。
「~♪ ~♪」
(あの絶妙かつ独特なリズム感! あれは少林寺拳法部で培ったものでしょうか? そして、時折みせるキュートさにオーディエンスは失神寸前です!)
「やっぱあのギターだろう!」
「ねえ、カッコいい!」
(いえ、それも違います……ギターの神谷龍臣さん……恰好いいことは否定しませんが、なんといってもあのテクニックと表現力! 信じられないような早弾きを見せたかと思うと、次の曲ではメロディアスな演奏をしっかりと聴かせる! 普段のエキセントリックな人柄がこの場では上手く作用しています!)
爽は腕を組んで深々と頷く。
「~~♪ ~~♪」
(ボクシング部らしい、激しい音のラッシュ! 凄まじい猛攻にオーディエンスはノックアウト目前です!)
「そうは言っても……」
「ボーカルが素敵~♡」
「イケメン~♡」
「悔しいが、それは認めざるを得ないな……」
(いいえ、それも違います……ボーカルの日比野飛虎さん……もちろん、ルックスの良さは言うまでもありませんが、それに負けない歌唱力とステージ上での存在感……! 激しいロックナンバーから甘いバラードまで幅広く歌いこなす! 多くの人の注目を一身に集めている……これが……圧倒的なまでの“カリスマ”!)
爽は腕を組んで深く強く頷く。
「おらおら! 江の島海岸、そんなもんか~⁉」
「きゃああ~!」
「うおおおおっ!」
飛虎が観客を煽る。観客もそれに応える。
(会場を一つにしてしまうこの力強さ……! これも空手部で鍛えた成果でしょうか? オーディエンスはもはや気絶者が続出しそうです!)
「これで終わりだ! ドラム! 津築玄道!」
「! ! !」
「なんか言えよ! ベース! 中目雀鈴!」
「~~♪ ~~~♪」
「だからなんか言えよ! ギター! 神谷龍臣!」
「あの時みたいに最高の夜だったぜ!」
「どの夜だよ⁉ ボーカルは日比野飛虎! 『四神』だ! またどこかで会おうぜ!」
「~~~~~‼」
(良い音楽を聴かせてもらいました。久々に体が熱くなりましたよ……)
爽は腕を組んでゆっくりと噛みしめるように頷くのであった。