ファントムオブツシマ
文字数 1,843文字
「おっ、いたねえ、デニスさんも……」
ユエが不敵な笑みを浮かべる。タイヤンが頷く。
「まさかわざわざ対馬に来てくれるとはな……」
「ほんとそれ、手間が省けるというものだね……!」
兵士たちがユエとタイヤンも包囲する。
「何者か知らんが、そいつらもついでに取り押さえろ!」
「いや、ついでにって……」
統率する男の言葉にユエが苦笑する。
「こいつらは何者だ?」
「さあ……」
タイヤンの問いにユエが首を傾げる。
「はあっ!」
「!」
爽が兵士を数人投げ飛ばす。包囲網がわずかに破れる。爽が声を上げる。
「皆さん! 落ち着いてここからどうぞ抜けて下さい! これはアトラクションなどではありません!」
「‼」
爽の声に応じ、舞台を見物していた人々がその場から離れる。比較的混乱は少なく、人々は包囲から抜けることが出来た。爽が安堵のため息をつく。
「ほっ……」
「サワっち、ナイス!」
葵が右手の親指をグッと立てる。統率する男が声を上げる。
「気にするな、目的はあくまで舞台上の女王だ!」
「女王?」
「どうやら勘違いしているようですね……」
「あらら……」
獅源が口を抑える。
「とにかく獅源さんを守ろう!」
「ええ!」
葵と爽が構えを取り直す。
「それっ!」
「えいっ!」
葵と爽が向かってくる兵士たちを次々となぎ倒す。
「くっ!」
「上様たちに守られている……なんだか複雑な心持ち……」
統率する男が顔をしかめ、獅源は目を細める。
「女王? どういうことだ?」
「それについて調べるのは後よ、タイヤン」
「それはそうだな……だが、この数……いちいち相手にするのは厄介だぞ?」
「それならばあれを利用するまで……」
「あれを?」
「ええ……それっ!」
「⁉」
ユエが地面に向かって手をかざすと、地面から半透明の姿をした古の武将や、異国の兵隊が多数現れる。ユエがふっと微笑む。
「思った通りね……」
「こ、今度は何⁉」
「これは元寇⁉」
「ええっ⁉」
爽の言葉に葵が驚く。ユエが感心する。
「へえ、なかなか鋭いわね、眼鏡のお姉さん。そう、ここ対馬はいわゆる『元寇』で、日本の武士と元の兵隊が激しく戦った場所……その霊たちを呼び起こしたわ……」
「そ、そんなことが……」
「……それがあなたたち組織の目的ですか?」
絶句する葵の横で爽が冷静に尋ねる。
「そうよ。厳密にはその地にまつわる霊的エネルギーの抽出が目的なのだけど、このよく分からない集団を片付ける為に、霊の方々にちょっと頑張ってもらうわ……」
ユエが淡々と答える。爽が首を傾げる。
「……一体どういう組織なのですか?」
「これ以上は教えるつもりはないわ」
「……そうでしょうね」
「さあ、かかりなさい!」
「くっ、迎えうて!」
統率する男が叫ぶ。タイヤンが笑う。
「ふっ、無駄なことを……」
「なっ、こちらの攻撃がすり抜ける⁉」
「霊だぞ? 普通のやり方で倒せると思うな……」
「上杉山流奥義……」
「武枝流奥義……」
「む?」
「『凍刃』!」
「『炎波』!」
銀髪のポニーテールの女性が竹刀を振るい、金髪のショートボブの女性が軍配を振るうと、氷の刃と炎の衝撃波が、迫りくる元寇の霊たちを一掃した。
「なっ⁉」
「上杉山雪鷹 さんと武枝 クロエさん⁉」
「上様、ご無事ですね」
「なにより……」
クロエと呼ばれた女性が笑顔を浮かべ、雪鷹はボソッと呟く。
「な、何者よ⁉」
「大江戸城学園の体育会副会長と書記です……ちなみに私が書記」
ユエの問いにクロエが落ち着いて答える。
「が、学園……学生ってこと⁉ ただの学生が霊を一掃するなんて……」
「……やってみたら出来た」
「だそうです」
雪鷹の呟きにクロエが肩をすくめる。タイヤンが唖然とする。
「そ、そんな馬鹿なことが……」
「ユエ! タイヤン! 貴様らの企みもここまでだ!」
「むっ⁉」
ユエたちが視線を向けると、ティムを抱えたデニスの姿があった。
「この近くに船を停泊させている読みが当たった! 大方人質にでも使うつもりだったのだろうが、当てが外れたな!」
「くっ、混乱の隙を突かれたか……どうする?」
タイヤンがユエに目配せする。
「隙が出来たのはそちらも同じ……! 妹ちゃんを確保すれば、プラマイゼロよ!」
ユエがエマに向かって飛び込む。
「そうはさせん!」
「むう⁉ ちっ、アンタもいたか、ここは撤退するわ!」
エマの前に立ったヒヨコが炎を巻き起こし、ユエを退ける。ユエたちは撤退する。
「そ、それは火の力⁉ 忌々しい巫女め、こんなところにおったか!」
兵士たちを統率する男が驚きながらヒヨコに向かって声を上げる。
ユエが不敵な笑みを浮かべる。タイヤンが頷く。
「まさかわざわざ対馬に来てくれるとはな……」
「ほんとそれ、手間が省けるというものだね……!」
兵士たちがユエとタイヤンも包囲する。
「何者か知らんが、そいつらもついでに取り押さえろ!」
「いや、ついでにって……」
統率する男の言葉にユエが苦笑する。
「こいつらは何者だ?」
「さあ……」
タイヤンの問いにユエが首を傾げる。
「はあっ!」
「!」
爽が兵士を数人投げ飛ばす。包囲網がわずかに破れる。爽が声を上げる。
「皆さん! 落ち着いてここからどうぞ抜けて下さい! これはアトラクションなどではありません!」
「‼」
爽の声に応じ、舞台を見物していた人々がその場から離れる。比較的混乱は少なく、人々は包囲から抜けることが出来た。爽が安堵のため息をつく。
「ほっ……」
「サワっち、ナイス!」
葵が右手の親指をグッと立てる。統率する男が声を上げる。
「気にするな、目的はあくまで舞台上の女王だ!」
「女王?」
「どうやら勘違いしているようですね……」
「あらら……」
獅源が口を抑える。
「とにかく獅源さんを守ろう!」
「ええ!」
葵と爽が構えを取り直す。
「それっ!」
「えいっ!」
葵と爽が向かってくる兵士たちを次々となぎ倒す。
「くっ!」
「上様たちに守られている……なんだか複雑な心持ち……」
統率する男が顔をしかめ、獅源は目を細める。
「女王? どういうことだ?」
「それについて調べるのは後よ、タイヤン」
「それはそうだな……だが、この数……いちいち相手にするのは厄介だぞ?」
「それならばあれを利用するまで……」
「あれを?」
「ええ……それっ!」
「⁉」
ユエが地面に向かって手をかざすと、地面から半透明の姿をした古の武将や、異国の兵隊が多数現れる。ユエがふっと微笑む。
「思った通りね……」
「こ、今度は何⁉」
「これは元寇⁉」
「ええっ⁉」
爽の言葉に葵が驚く。ユエが感心する。
「へえ、なかなか鋭いわね、眼鏡のお姉さん。そう、ここ対馬はいわゆる『元寇』で、日本の武士と元の兵隊が激しく戦った場所……その霊たちを呼び起こしたわ……」
「そ、そんなことが……」
「……それがあなたたち組織の目的ですか?」
絶句する葵の横で爽が冷静に尋ねる。
「そうよ。厳密にはその地にまつわる霊的エネルギーの抽出が目的なのだけど、このよく分からない集団を片付ける為に、霊の方々にちょっと頑張ってもらうわ……」
ユエが淡々と答える。爽が首を傾げる。
「……一体どういう組織なのですか?」
「これ以上は教えるつもりはないわ」
「……そうでしょうね」
「さあ、かかりなさい!」
「くっ、迎えうて!」
統率する男が叫ぶ。タイヤンが笑う。
「ふっ、無駄なことを……」
「なっ、こちらの攻撃がすり抜ける⁉」
「霊だぞ? 普通のやり方で倒せると思うな……」
「上杉山流奥義……」
「武枝流奥義……」
「む?」
「『凍刃』!」
「『炎波』!」
銀髪のポニーテールの女性が竹刀を振るい、金髪のショートボブの女性が軍配を振るうと、氷の刃と炎の衝撃波が、迫りくる元寇の霊たちを一掃した。
「なっ⁉」
「
「上様、ご無事ですね」
「なにより……」
クロエと呼ばれた女性が笑顔を浮かべ、雪鷹はボソッと呟く。
「な、何者よ⁉」
「大江戸城学園の体育会副会長と書記です……ちなみに私が書記」
ユエの問いにクロエが落ち着いて答える。
「が、学園……学生ってこと⁉ ただの学生が霊を一掃するなんて……」
「……やってみたら出来た」
「だそうです」
雪鷹の呟きにクロエが肩をすくめる。タイヤンが唖然とする。
「そ、そんな馬鹿なことが……」
「ユエ! タイヤン! 貴様らの企みもここまでだ!」
「むっ⁉」
ユエたちが視線を向けると、ティムを抱えたデニスの姿があった。
「この近くに船を停泊させている読みが当たった! 大方人質にでも使うつもりだったのだろうが、当てが外れたな!」
「くっ、混乱の隙を突かれたか……どうする?」
タイヤンがユエに目配せする。
「隙が出来たのはそちらも同じ……! 妹ちゃんを確保すれば、プラマイゼロよ!」
ユエがエマに向かって飛び込む。
「そうはさせん!」
「むう⁉ ちっ、アンタもいたか、ここは撤退するわ!」
エマの前に立ったヒヨコが炎を巻き起こし、ユエを退ける。ユエたちは撤退する。
「そ、それは火の力⁉ 忌々しい巫女め、こんなところにおったか!」
兵士たちを統率する男が驚きながらヒヨコに向かって声を上げる。