見た目を見た目

文字数 1,313文字

 ぼへえ~、としているせいか、何か起きない限り基本スローモーなせいか、苦労なんてろくにしてきてないんでしょ、みたいに思われることが比較的よくある。が、四十年ほども生きてきているのだから、もちろんそんなことはない。というより、わりと波乱万丈な半生を生きてきたと思うのだがねえ。
 ところで、人は何だかんだ見た目で判断するもので、それは案外当たっている、みたいなことが時折言われる。が、あれは真であって真ではないようにも思う。見た目柔らかそうな毛並みでもゴワゴワ剛毛だったり、簡単そうな仕事が実はかなり難易度が高くて時間かかったり……って、そういう話ではにゃいわい。
 他人からの人物評で、私はほとんどの場合おおらかなのんびり屋だと思われるのだが、数年前ある人に、神経質で几帳面で融通が効かないタイプだと思ってた、と言われてびっくりしたことがある。意外だったというより、むしろそのほうが自分の根っこに近いと感じていたからだ。えー、そんなん言われたのは小学校以来だわあ。せっかちで神経質で完璧主義、そうした根本性格に気付いていたからこそ、極力そうならないよう心掛けて振る舞っていた、そのうちに少しずつ表に出るものも変わってきた、今はむしろ行きすぎなくらいぼんやりのんびりになってしまった、という自覚なのだが。
 しかし、これまた愉快な事実が発覚した。興味本位で受けた遺伝子検査で、今のチミののんびり性格こそが本来持っているものだよん、と出たのである。ええー、私のあの苦労の日々は一体……!?
 マジメな話をすると、性格というのは遺伝と環境要因が複雑に影響しあって出来ている。そして、置かれる環境によって一時的に本当に人が変わったようになることもままある。だから、「生まれ持った性格」はわりと変わるし、人は変わらないようでいて変わる。三谷幸喜監督最新作『スオミの話をしよう』じゃないが、見ている人によって人物像が大きく変わる、なんてのも、あながち創作世界だけの話ではないのだ。ま、あれは極端にデフォルメされているだろうけども。同じものを見ているはずなのに正反対に近い感想を抱かれる、そんな矛盾も、きっとまた人の真なのだろうねえ。
 見た目で判断するというのも別に悪いことばかりではなくて、おそらく生き物が生存戦略として獲得してきた特性なのだろうと思う。その相手の本性を知ろう、なんてノコノコ近付いていったら食べられてしまった、なんてことも最悪起こりうる状況に野生生物は置かれているからだ。まずは自分の身を守り生き抜く、そのサバイバーとしての本能は当然ニンゲンにもあるはずで、見た目で判断して決めつける、みたいなのはそうした動物的な行為なのかもしれぬ。
 今さら言うまでもないことではあるが、見た目で判断したらとんでもない誤解だった、みたいなことは人間相手でもその他の動物相手でも起こりうる。だから野生的な美貌のネコを飼ってみたら、デレデレベタベタの甘えん坊だった、みたいなことも普通に起きるのである。もー、孤高の存在みたいなキリッとしたお顔で、おはようからお休みまで、ずっと引っ付いていたい系男子なのかい、キミは。んーーーー、もーぉぜーんぶ許す♪
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