光りたかった、ただの石ころ

文字数 1,172文字

 先日、デリバリーピザをとった時のことである。いや、わりと大きめの締切(書き物ではないが)がこのひと月くらいで二つあって脳ミソの容量がいっぱいいっぱいなので、半額デーに宅配可能最低料金ギリギリの注文をするくらい許してほしい。そして問題はそこではない。ボンビーの癖に、じゃないのねん。
 某社のピザをWebで注文すると、ありがと! 届くまでよかったらこれで楽しんでてよ☆、というリンクが注文完了画面で出るのだが、こちらが今回の本題である。
 この日は、若手ハイキャリア向けの転職サイトによる職業適性診断、というのが表示されて、怖いもの──もとい診断見たさに無料登録してみた。お気付きだろうが、こちとら若手でもハイキャリアでもない。ついでに転職する気もない。というか、そもそも世間一般の生活ペースに合わせたお仕事、まっとうな生き方というのができない。無理、絶対。それでも、見たかったからやった。後悔はしていない。
 で、ふーん、という以上の感想を抱かなかった診断結果を無事に見て、たぶん一番見てほしかったのであろう企業求人を見ずにブラウザを閉じる。ん、ゴメンね。
 それで終わったのだ。少なくとも私の中では完結していた。だって、若手でもハイキャリアでもなく、お天道様の下でニコニコ輝いていられる自信だってないんだもん。若手ハイキャリアなんて今世において全く、もう全く縁のないキラキラ世界──若手……ハイキャリア……お金、持ってそうだなあ。未来が輝いていそうだなあ。いいなあ。
 が、何をどう見誤ったか、数日後に届いたのだ。スカウトメールが。え、御社、そんなに人材不足なんです? 人材というか人災を自らの手で引き入れちゃうん?
 しばしの混乱の後、ようやく気付いた。これは、最初から仕組まれた企業戦略なのである。思い出してほしいのだが、ピザ注文完了画面で出たサイトである。空腹な人間を診断というおいしそうなメンタルエサで釣っているのである(言い方失礼だな、自分)。そこに食いつくのは、必ずしもターゲットの高級魚ばかりではない。つまりは、たぬ丸のごとき雑魚も釣れるなんてことは先刻承知、想定済みなのだ。加えて、若手ハイキャリア向けで求人スカウトが来た、となれば、人材様のプライドも満たされる。本来該当しない求人だって、もしかしたら出せるかもしれない。何せ今は、就職氷河期世代のチベットスナギツネ顔が見えてきそうなほどの売り手市場なのである。
 ──あーもーなんかね、こういうこと考えちゃうのがもうね、キラキラ若手ハイキャリアの資格がないのよなあ(そもそも一個も資格ないわい)。よごれつちまったかなしみ。
 案の定、求人内容はごく平凡で、むしろたぬ丸くらいの年齢と地味さが向いているようなポジションと想定年収だったのである。ふっ、一瞬だけでも、夢を見せてもらったよ……。
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