六つの大罪

文字数 898文字

 人は過ちを繰り返す。分かっていながら、なぜか同じ失敗を重ねる。理由は様々だろうが、全くもって歓迎されるものではない。
 「過ちて改めざるを過ちと言う」と昔の中国のエラい人は言った。失敗するのは仕方がない、失敗をちゃんと認めて自らが変わっていかないことこそが罪なのだよん、という意味だ。
 とりあえず、罪を認めて変わろうと試みるまではした。しかし実際に変わらなければ、やるやる詐欺となんら変わりない。
 午前零時ごろには仕事を切り上げろ・何がなんでも飯は食え・疲れたり体調の異変を感じたりしたら早めに休め・心が疲れたときも休め・自分に必要な睡眠時間を死守しろ・無理なものは無理なんだから断れ・ハムスターとネコがかわいい・項目の中にしれっと異物混入させるな……。これの六つめまでを、なぜか、分かっているのに、幾度となく、破ってしまうのだ。
 一時期、これら破ってはならぬものを標語のように紙に書いて貼っていたこともあるのだが、引っ越しで処分してしまった。ついでに、貼っていたのに平気で破っていた。しかし、誰に言われたでもなく考えついた内容なのだから、破ったら何が起きるかは明白だ。かくして、やる気ないの? 馬鹿なの? あんた馬鹿ぁ? と自らを罵りながらフトンに潜り込むこととなるのである。
 無理をすること、自分を犠牲にすることが美徳だ、という価値観が、いまだ現代日本にはある。いや、自分の失敗をごまかすために主語を大きくするなよ、って話ではあるのだが、実際問題、こうした個をないがしろにする風潮はなかなか消えない。それじゃいけないよね、という声が昨今急激に高まりはじめているのは、本当に本当によいことだと思う。
 ただ、自分を大切にすることは、他人に理不尽を押し付けてよいということとイコールではない。それはただの我が儘である。そしてなぜかこの加減が絶妙に上手いのが、我が家の一歳のネコなのである。嫌なものは嫌、だけれど、あなたの「嫌だ」も尊重します、というスタンス。うーむ、薄々感じてはいたが、コイツ、本格的にネコじゃないわなぁ。どうやら知らず知らずのうちに猫又を我が家に迎え入れてしまったようである……。
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