あぶらげコンコン

文字数 1,076文字

 とうとうキツネになってしまったようなのである。どうにも油揚げが美味くて仕方がない。油揚げならどれでもいいわけではなく、新潟特産「栃尾のあぶらあげ」が、なのだが、これがもうどうにもタマラン。わらじみたいな大きさで分厚い、と聞いて興味本位で手を出したのが運のつき、スーパーに行くたび吸い寄せられるようにふらふらと納豆&豆腐コーナーへ向かっている。
 軽く火を通してたっぷり醤油を含ませ、チューブ入りのしょうがとにんにくを乗せる。本当はお上品にひと口サイズに切り分けるべきなのだろうが、そのまま豪快にかぶりつく。だって、あたくしキツネなんだもんさ。この、丸のままかぶりつくのがもしかしたらミソかもしれない。独特の食感と充実感。まあ他人に見られないところでやる、密かな楽しみ方かもしれぬ。
 パッケージにはおすすめの料理法が他にも書いてあるし、本来湯通しして油抜きをするのだそうだが、ともかく目の前にぶら下げられたあぶらげさんを早く食べたいのである。かくして、一分のレンチンとトッピングで完成するコレばかりがリピートされるのであった。コンコーン!
 油揚げに限らずだが、どうしてもこれが今食べたい、となることが時折ある。手元にそのものや材料があれば特に問題なく願いは叶えられるのだが、買ってこないといけない、となった場合、取るべき手段は複数に分かれる。そのものを買ってくるか、材料を買ってきて作るか、代替品にするか。まあだいたいの場合、めんどくさー、と現在手元にあるものになるのだが、この時もなんやらかんやら考えを巡らせて最適解と思われるものを探っていく。たとえばプリンが食べたいと思ったとき、プリンの何が欲しいのか、甘みなのか食感なのか成分なのか、それを満たせる別の食品とは何なのか、それを食べたとしてある程度の満足感が得られる見込みはあるか。それで、たぶんオーケーだろうと思ったら、のろのろと起き上がって(こういう時はだいたいごろ寝している)ごそごそそれを取り出す。誰かの代わりで求められるなんて嫌! とその食材は言うかもしれないが、うん、ごめんねぇーと思いながらも自己中に欲求を満たす。
 しかし、である。それで完全に満足することは、正直滅多にない。だから、別のものも一緒にもそもそ食らうことがほとんどだ。カロリー? 知らない名前ですねえ。
 結局、変に小細工せず素直に食べたいものを食べたいときに食べるというのが、精神面でも費用面でも(もともと高級品の味は知らぬ)健康面でも、最適解なのかもしれぬ。その行く手に立ちはだかるラスボスの名を、「面倒くさい」という。
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