たぬ丸、たたかう。

文字数 1,210文字

 残念ながら、お世辞にも「きれい好き」や「まめ」と評されるタイプではない。が、日常的に目にするスペースが荒れているとイラっとする程度のきれい好きではある(それをきれい好きと呼ぶかどうかは置いておいて)。といっても、別に家探しされたわけでなし、荒らしているのは自分以外の誰でもないのだが。
 おネコ様が我が家に降臨されて、一カ月半ほど経った。ようやくお互いのペースや事情をお互いが理解しはじめて、よい感じの距離感になってきたのだが、清掃や整理整頓について少々不都合が出始めている。要は、おネコ様の生活圏(プラス、おハム様のケージまわり)「のみ」、手入れが行き届くようになってしまったのである。
 おネコ様のテリトリーは、玄関および玄関に続く廊下を除く一階すべてだ。手仕事の作業場、ダイニングキッチン、洗面所と風呂場で、ここはおネコ様の安全と健康のために常に……あー、できる限り、清掃整理整頓して、とりあえずそこそこきれいな状態を保っている。しかしである。そもそもがものすごくきれい好きというわけではないたぬ丸のキャパは、こちらにほぼ全振りされることとなった。すなわち、寝室とリビング、階段が、大変手薄になってしまったのだ。
 たしかに、真夏の日中においては私もパソコンを一階におろし、ほぼずっとこちらで過ごしているのだが(この時期の二階は生きとし生けるものを本気で蒸し殺しにかかっているので、必死に抗っている状況)、だからといって二階を使わないわけではない。というか、夜間は必ず使うし、おハム様のいらっしゃる空間がご不快ではないか確認するために、昼間もそこそこ頻繁にエアコンのご機嫌窺いに上がる。つまりは、二階だって生活スペースなのである。
 外気温摂氏三十七度、世間は夏休み真っ盛り、近所の花火大会翌日の日曜日、ついにたぬ丸が動いた。おネコ様の天敵・ガーお化けとニョロお化けを手にし、たぶんまた家具の下に逃げ込んでいるんだろうなーと思いながら爆音を響かせてガー君をフル稼働させ、階段はしっとり一反木綿で角っこまで拭き上げ、玄関には内外に水をまいてデッキブラシでぐわっしぐわっしこすり、短時間ながら窓と玄関を全開にして、……あ、やばい、ちょっと気持ち悪くなってきた。塩タブレットと水ぅ……。
 エアコンのよく効いた一階にひっくり返って風にはためく洗濯物を見ながら改めて思う。「普段からやっておけ」。そして、「加減を知れ」「なんでも一気にやろうとするな」「時期を見誤るな」。なんでこう極端なんだろうか、と自分でも思ってはいるのだが、大仕事をやり遂げたときの爽快感っていうのがやっぱりたまらんのである。なんかこう、自分の中のすべてが浄化されるような、世の中の幸福すべてをこの手にしたかのような……そういうのは、やったらやっただけ金銭的報酬を得られる業務でやるべきっすね、あい、ごもっともでごじゃります、まことに申し訳ございましぇん……。
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