第11話:同時多発テロとデリバティブ

文字数 1,506文字

 9時57分、機内電話や携帯電話による外部との連絡でハイジャックの目的を自爆テロと認識した乗客が機の奪還に乗り出した。10時3分、93便は490ノット、時速906キロの速度でペンシルベニア州ピッツバーグ郊外シャンクスヴィルに墜落した。離着陸時の速度の倍以上の高速で地上に衝突したため、機体の残骸はほとんど原形を留めていなかった。

 乗客たちがハイジャッカーたちに反撃した際「レッツ・ロール」「さあやろうぜ・よし、皆かかれ」を合図にしたと言われている。この「レッツ・ロール」は9.11事件以降のアフガニスタンでの「報復戦争」において一種のスローガンとして用いられた。9.11事件の調査委員会は乗客は操縦室内に進入できなかったと結論づけた。

しかし、一部の遺族はCVR音声に乗客が操縦室に進入した証拠が記録されていると主張した。ワールドトレードセンターへのテロ攻撃による死者は合計で2763人であった。その内訳は事件当時ワールドトレードセンターに居た民間人が2192人、消防士が343人、警察官が71人、旅客機の乗員乗客が147人、テロリストが10人だった。

 その後、2001年9月20日、アメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュは「対テロ戦争」を宣言し、ターリバーン政権にビン・ラーディンと全てのアルカーイダ指導者を引き渡すことを要求する最後通牒を突き付けた。その後、この米国同時多発テロ事件を契機にアフガニスタン紛争が勃発した。しかし、アメリカにおける大事件は、これだけでは済まなかった。

 この大事件の発端は1980年代のレーガン政権が「エネルギー産業の規制緩和」を行なった時にさかのぼる。この頃、エンロン社がデリバティブ取引を開始。デリバティブはそれぞれの元となる金融商品と強い関係がある。そのため、デリバティブ、日本語では一般に「金融派生商品」、「派生商品」と訳される。リスク管理や収益追求を目的としたデリバティブの取引には基本的に以下のような取引がある。

 先物取引「将来の売買についてあらかじめ、現時点で約束をする取引」オプション取引「将来売買する権利をあらかじめ売買する取引」さらに、これらを組み合わせた多種多様な取引もある。債券の価格と関係する「債券デリバティブ」金利の水準と関係する「金利デリバティブ」対象となる商品により一般的な金融デリバティブ以外にも多くのデリバティブができた、

 気温や降雨量に関連付けた「天候デリバティブ」の様なデリバティブまでデリバティブの対象は多岐にわたる。そして成功すれば、巨万の富を得られるが失敗すれば天文学的な損害を被る。そのため、コンピューターを使った確率を割り出して慎重に勝つ性格に投資することが必要になった。エンロンは元々、米テキサス州ヒューストンで天然ガスのパイプラインなどを運営していた数社が合併して誕生した。

 そして合併してできたノーザン・ナチュラル・ガスがベースになっていた。1985年にテキサス州の同業ヒューストン・ナチュラル・ガスと合併した。全米の海岸と国境線を結ぶ一大パイプライン網を保有する大企業となり社名をエンロンに変更した。エンロンが飛躍的な発展をもたらした。その理由は、1990年代に推進された米国の電力自由化政策が大きなきっかけだった。

 これで従来の天然ガスや石油、電力などエネルギー供給を主力とした事業に加え水や石炭、アルミニウム、紙の様な取引できた。それだけでなくインターネット用電波帯域、信用リスクや天候など売買できなりと思われたものまでを対象にした新市場を創出した。そのビジネスモデルは取扱商品を標準化して取引するマーケットを用意した。
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