第21話 亡命の姫
文字数 706文字
イーター商会のある町も例外ではない。
「強盗?」
「そうなの、最近じゃ週に一回起きてるらしいの、真っ昼間によ。お陰でうちのお得意様がまた一軒店を畳んじゃって困ったものよ」
何故か分からないがミレーユが店に上がり込み私のデスクの前で無駄話をしてきた。
「それが何だ。何故お前がここにいる」
「だ…旦那…」
番頭のイデスが悶えながら這ってやってきた。
「イデス、お前には店番を任せた筈だ。何故部外者がここにいる」
「すいません…こいついきなり俺の大事な…」
はぁ、またか
「あんた弱すぎよ。それでも世界最強の剣士何でしょう、あんたを倒せるなら私がその称号を名乗ってもいい?」
「てめぇ調子乗ってんじゃ…ぐぅっ」
面倒だ、さっさとあしらおう。
「用件は何だ、私はお前ほど暇ではないが」
ミレーユが私に指さした。
「ヴィンセント、これは忠告よ。あんたもそのうち痛い目に遭うわよ」
「それをわざわざ言いに?」
「あんたの店、羽振りがいいじゃない。いつ狙われてもおかしくないわよ」
「問題ない店番がいる」
「その店番が私のようなか弱い女にやられてるじゃない」
「か弱い女がいきなりタマを蹴るかよ…クソ痛ってー」
「とにかく忠告はしたからね、お互い競争相手としてこんなことで潰れるんじゃないわよ、じゃあ」
そう言いさっさと部屋から出でいった。
強盗か、確かに面倒だ。
イデスは強いが町を壊滅しかけない。
アルバートは、部隊を動かすにも今は訓練で忙しい時期だ、人員を割くわけにはいかない。
ユースはいつ帰ってくるか分からない。
私も常に店にいるわけでもない。
必然と彼女しかいない。
「サリーナいるか」
「はいこちらに」
「無線を繋いでくれ。