第16話 傭兵稼業
文字数 1,574文字
目隠しをして馬車に乗せられた。暫くして降りるようにと言われ手を繋いで誘導され今度はトラックの荷台だろう、席に座らされた。道を進む揺れから整備がされていない山道を進んでいるようだ。そしてある場所で止まった。
「お待たせいたしました。どうぞ目隠しを外して構いません」
ヴィンセントが目隠しを外すと既に深夜、コンクリートの壁で出来た建物が大小三つ、整備された広場に軍事物資のコンテナが並び紺色の迷彩服を着てライフルを携行した男たちが荷物を運んでいる。
「こちらが我が傭兵部隊の拠点でございます」
この傭兵部隊の隊長自ら説明した。
ヴィンセントは目を細めて辺りを見渡した。
「我々は正規軍とは違えど兵力は遥かに上です。実践戦闘は帝都の兵士より経験は豊富です。警備、要人警護、暗殺、多岐にわたります。度々正規軍にも協力しております」
確かにここに並べてある物資は国軍と同じ物、否や迷彩服と携行している銃からして海外製、軍事国家で有名なレガリスの装備で間違えない。
「少し気になる事があるのですがよろしいですか?」
ヴィンセントは社交的な口調で質問した。
「ええ、どうぞ」
「ここの兵士の装備ですが海外製の物ですか?帝都でもあの装備は見たことはありませんが?」
「はいそうです、この部隊の装備は全て大国レガリス製でございます。入手方法は詳しくお教え出来ませんが先ほど申し上げた通り、我々は正規軍に手を貸しておりますので軍から提供してもらえているのです」
「成る程、努力の賜物ですね、あとここには何人程所属しているのですか?」
「申し訳ございません、詳しくはお教え出来ません。軍の仕事をこなしながら他の仕事をする余裕はあると申し上げましょう」
人員はそれなりか、悪くない。
次は訓練施設を見せてもらった。運動場、射撃場と室内射撃場、通信室、会議室、自家発電をしているようだ、各場所には電気が通っている。
そして食堂で兵士たちを見ながら取引の話しをした。
「いかがでしょうか、
この国一の傭兵部隊
を見ていただいたご感想は。あなたの想定以上の働きを致します、損はさせません。どんな仕事でも致しましょう。ただし、暗殺任務については目標によってはお断りさせていただく場合がございますが」確かに悪くない。
「ええ、とても素晴らしいです。悪くありません」
ヴィンセントは笑みを浮かべた。
「では契約と仕事内容でも致しましょう。私の部屋で早速…」
「悪くない、
この国一の傭兵部隊
という冗談は笑わせてくれる」「え、何ですって」
「本当に他の傭兵と比較をしたのですか?だとしたらあなた方の市場調査は酷いものだ、本当に笑わせてくれる」
ヴィンセントが笑いだし食堂にいた兵士たちの注目を集めた。
「いや失礼、笑い過ぎた。ではお見せしよう、
本当の一番を
」言いはなった途端に部屋の明かりが落ちた。
暗闇で静寂に包まれた。
一瞬の出来事だった。自分に起きた事が理解できない。
目の前は見えない、音だけ聞こえる。
硝子が割れる音、その後に微かな破裂音が数回、そして何かが倒れる音。そして最後に記録にあるのは
緑の線
だった。緑色の貼り詰めた糸の様な光が伸びる、次第に数は増えていき六本の光の線が部屋を見回す。
「
ヴィンセントはライターを取り出し部屋を照らした。
目の前の床には先ほどの隊長が横たわっている。
「ボス、任務完了です。撤収します」
ヴィンセントの周囲には五人。黒の迷彩服、頭にゴーグルを着け手に持つ銃の先から緑の線が伸びている。
ヴィンセントは倒れている隊長の顔を見た、どうやらまだ意識があるみたいだ。
「紹介しようこれが私の傭兵部隊
ガーコ
だ」