第3話 悪魔

文字数 1,704文字

農場に着くとすぐ際に倉庫に案内された。
倉庫内はとても暗く柱にランプと天井に付いているライトの明かりでようやく人の姿を確認できる。十四人、ボルトアクションライフルを所持している五人、他は斧とナイフ。

「待ってたぜ。ほら、こっちに来てくれ」
農場主だ。派手なシャツを腕だけ通してたっぷりと脂肪を溜め込んだ腹とリボルバーを見せつけている。

「どうも初めまして、イーター商会のヴィンセントと申します。先日にお届け致しました商品はいかがでしょうか?」

「あんな武器(ブツ)見たことないぜ。試し撃ちしてみたが一発で弾け飛んだぜ」
農場主は指を指した方向には暗くてはっきりと見えないが鎖で繋がれた人間が何人かぶら下がっている。暗くでも分かる、蜂の巣にされ頭部は原型をとどめていない。

「喜んで頂いてこちらも光栄の至りでございます。そこでなんですかお気に召して頂けたようでしたらこちらのご購入の検討をしていただけましたら幸いなのですか…」
「なあヴィンセントさんよ」肩を捕まれた。

「あんたは売り込むのは売り込むのは得意らしいが取引に関しては素人みたいだな」
ライフルを持った男はレバーを引き薬室を弾丸を装填した。

「あんたに払う金はねぇ、この銃は俺たちが頂く、あんたは手ぶらで帰る、いいな」
「流石に商品をタダと言うわけには…」

農場主は腹にしまっていたリボルバーの銃口をヴィンセントのこめかみに当てた。
「生きて帰りたかったら黙って帰りな」
「し、しかし…」
撃鉄を上げる音がした。
「二度目はねぇぞ」

「分かりました、今回はそうしましょう」
農場主は不適な笑みでヴィンセントの背中を叩き出口に押し出した。
「お前さん、次も頼むぜ」
「次とは…」
「決まってるだろ、こんなにいいブツ他の奴らに売り込めるだろう」
「…」
「ヴィンセントさんよ、俺がこの辺でなんて呼ばれているが分かるか、

だとよ。あんたは悪魔と取引したんだ、今後ともよろしくな」
農場主と周囲の取り巻きも大笑いした。

ヴィンセントは農場主に頭を下げた。
「分かりました…ではこうしましょう」

笑い声が止まった。
「は、何て?」

「そちらの商品は差し上げます、代わりに…」
いきなり柱に付いているランプの明かりが消えた。照らされているのは天井の明かりだけ、ヴィンセントを照らしてた。
お前達の首をいただく!

「殺れ」農場主が痺れを切らし部下に命令したが反応がない。
「おい、殺れ」側にいる部下の方を見て言ったが、答えがない。そこにあるはずの部下の頭がない。
「は…」理解が追い付かない。
血を吹き出しながら頭のない身体が倒れた。
「だ、誰でもいい殺れ!」農場主が適当に乱射した弾が天井のライトにかすり明かりが揺れた。ヴィンセントの姿が見えたり消えたり、照明が三往復した時、完全に明かりが消え暗闇に支配された。

農場主は手の震えを抑えながら暗闇の中リボルバーを構えた。右側から物音が聞こえた、直ぐに振り向くが何も見えない、今度は背後からなにかがはい回る音が聞こえる。次第に音の感覚が短くなってきた。身体の震えが止まらない。

だ、誰か…

突如、身体が硬直した。動けない。
足音が近づいてくる。やめてくれ

突如目の前に明かりが照らされた。ヴィンセントがライターで照らしながらゆっくりと近づいて来て目の前で止まった。そして自分の状況を把握した。鎖で拘束されている。どうなってるだ。この鎖はヴィンセントと鞄に繋がっている鎖だ。状況が追いつ前に頭の上から顔にべっとりとした液体がかかった。

なんだ!この臭い、血か…

垂れてきた頭上を見上げた。
はっきりとは見えないが何かいる。虎バサミの様な歯が見える。あれは、鞄…まるで生き物のようだ。

「頼む…止めてくれ…」農場主は嗚咽(おえつ)混じりに泣き出した。
「全部あんたに返す、だから助けて…」

ヴィンセントは農場主の耳元に近づいて言った。
「もう遅い。契約は

だ」

ヴィンセントはライターの明かりを消し囁いた。

『食らえ』








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登場人物紹介

ヴィンセント

黒のハットとスーツを着こなし右手に手錠で繋がった金属製の鞄をを常に持つイーター商会の代表取締役社長

目的の為なら手段をいとわない

彼の出生、過去、目的は不明

ミレーユ

世界一の商人を目指す少女

勝ち気で負けず嫌い、商売で困っている人たちを助けてあげる事を目標にしている

非情な商いをするヴィンセントを敵視している

一人で店を切り盛りしているマリーンを尊敬している

イデス イーター商会番頭 幹部

がさつで粗暴の荒いが義理人情に厚い

一度仲間だと認めた相手には優しいが、初対面の相手にはガンを飛ばすなど怒ると手がつけられない狂犬

常に店番をしている

ヴィンセントの命令には絶対服従

アルバート イーター商会傭兵 幹部

イーター商会専属の傭兵部隊「ガーコ」の隊長

屈強な体格と顔の傷を隠す様にサングラスを掛け、見た目は近寄りがたいが誰にたいしても優しく心優しいジェントルマン

己の肉体と隊員たちに愛のムチと言って日々、肉体と戦闘技術を鍛えた後甘い物を食べるのが日課

ヴィンセントに対して絶対的な信頼をよせている

ユース イーター商会霊媒師 幹部

中性的な容姿と顔立ちで初対面で会った相手は男か女かわからないほどの美青年

華奢な身体のわりに自分の背丈ある木片で作られた張りぼての棺を背負っている

誰にたいしても物腰が柔らかく、礼儀正しい

ヴィンセントには絶対的な忠誠を誓う

コレッティア イーター商会技術開発 幹部

海外から来た科学者兼技術者

極度の対人恐怖症で常に自分の研究室にひきこもっている

滅多に顔を出さないので商会内でも彼女の存在を知るものは少ない

彼女の知識・技術は今の帝国を遥かに凌駕する程

ヴィンセントには絶対的な信用を寄せている

サリーナ イーター商会社長秘書

ヴィンセントと社員のスケジュール管理、資料作成管理、時にはヴィンセントの留守の間社長代理を勤める

仕事意外の会話は一切せず、機械の様に仕事をこなす

社長のヴィンセントの指示には必ず従う

パム イーター商会運転手

いつも笑顔が絶えないイーター商会の専属運転手

十代ながら天才的な運転技術を持ち、目的地まで最速、安全に飛ばす。

マリーン コレリア雑貨店店主

老舗雑貨店を切り盛りしている魔女

主に薬草や医薬品、日用雑貨を中心に取り扱う

ヴィンセントとは長い付き合い

ユベール・ロッシュ・Jr.  探偵

ヴィンセントの義理の叔父

帝都の郊外で名前のない探偵事務所を運営している

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