第22話 亡命の姫

文字数 753文字

とある昼間、ヴィンセントは暫くの間出張で出払っていた。イデスは店前でいつものように箒で掃除をしていた時だった。

通りから慌てて走ってくる男がこちらにやってくる。

「大変だ!大変なんだ!」
その男はイデスの両腕を掴み息を切らした。
「なんだオメェは、邪魔だから帰ってくんねぇか」
イデスは男の腕を払った。
「大変なんだ!あんたのところの社長が事故にあったんだ!」
「何!旦那が!」
「病院に運ばれて治療中で意識が無いらしい。連れの小さい女の子が伝えてくれと頼まれたんだ」

連れの女の子、パムだ。

「おいどこの病院に運ばれたんだ!さっさと言え!」
「隣町だ、かなり危険な状態らしい。だから急いで伝えてくれと」
「こうしちゃいらねぇ!待ってろ旦那ー!」
箒片手に全力速で駆けて行った。

「馬鹿な奴」
下調べ通り店番は単純で騙しやすかった。
他の店の者は休憩に入っている時間帯だ。
後は簡単だ、休憩が終わる前に仕事をするまでだ。
男は口笛を吹き、路地で待っていた仲間たちに合図を送った。
金目になるものは既に調べてある。ここからは時間との勝負だ。
仲間と協力して表に停めた荷馬車へ目当ての品を運び出す。
骨董品の壺、絵画、宝石、金目の物は積み込んだ。
時間厳守、欲張りはしない。
「急げ、撤収だ」
荷台に布を被せ仲間と共に乗り込み慌てずにその場をさった。

町の外、荒野まで移動できた。
ここまで来ればもう追われる事はない。
「楽勝だったな」
仲間たちが談笑する。
悪魔と取引した男、手を出すと生きて帰れないと言われているが大した事はなかった。なんと簡単な仕事だった。
これで俺たちもこの生業の上位に立てる。

ふと空を見上げたときだった。
青空に鳥が一羽飛んでいる。
鳥…それにしては大きい…何か落ちて…

「何だありゃ」
イデスが隣町へ向かう途中、爆発音と共に巨大な粉塵と煙が上がった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ヴィンセント

黒のハットとスーツを着こなし右手に手錠で繋がった金属製の鞄をを常に持つイーター商会の代表取締役社長

目的の為なら手段をいとわない

彼の出生、過去、目的は不明

ミレーユ

世界一の商人を目指す少女

勝ち気で負けず嫌い、商売で困っている人たちを助けてあげる事を目標にしている

非情な商いをするヴィンセントを敵視している

一人で店を切り盛りしているマリーンを尊敬している

イデス イーター商会番頭 幹部

がさつで粗暴の荒いが義理人情に厚い

一度仲間だと認めた相手には優しいが、初対面の相手にはガンを飛ばすなど怒ると手がつけられない狂犬

常に店番をしている

ヴィンセントの命令には絶対服従

アルバート イーター商会傭兵 幹部

イーター商会専属の傭兵部隊「ガーコ」の隊長

屈強な体格と顔の傷を隠す様にサングラスを掛け、見た目は近寄りがたいが誰にたいしても優しく心優しいジェントルマン

己の肉体と隊員たちに愛のムチと言って日々、肉体と戦闘技術を鍛えた後甘い物を食べるのが日課

ヴィンセントに対して絶対的な信頼をよせている

ユース イーター商会霊媒師 幹部

中性的な容姿と顔立ちで初対面で会った相手は男か女かわからないほどの美青年

華奢な身体のわりに自分の背丈ある木片で作られた張りぼての棺を背負っている

誰にたいしても物腰が柔らかく、礼儀正しい

ヴィンセントには絶対的な忠誠を誓う

コレッティア イーター商会技術開発 幹部

海外から来た科学者兼技術者

極度の対人恐怖症で常に自分の研究室にひきこもっている

滅多に顔を出さないので商会内でも彼女の存在を知るものは少ない

彼女の知識・技術は今の帝国を遥かに凌駕する程

ヴィンセントには絶対的な信用を寄せている

サリーナ イーター商会社長秘書

ヴィンセントと社員のスケジュール管理、資料作成管理、時にはヴィンセントの留守の間社長代理を勤める

仕事意外の会話は一切せず、機械の様に仕事をこなす

社長のヴィンセントの指示には必ず従う

パム イーター商会運転手

いつも笑顔が絶えないイーター商会の専属運転手

十代ながら天才的な運転技術を持ち、目的地まで最速、安全に飛ばす。

マリーン コレリア雑貨店店主

老舗雑貨店を切り盛りしている魔女

主に薬草や医薬品、日用雑貨を中心に取り扱う

ヴィンセントとは長い付き合い

ユベール・ロッシュ・Jr.  探偵

ヴィンセントの義理の叔父

帝都の郊外で名前のない探偵事務所を運営している

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み