第6話 商人の矜持
文字数 959文字
スーツを着こなしヒールを履き、メガネをかけ長髪を綺麗にまとめた容姿。
サリーナは休むことなく体と腕を動かしていた。
ヴィンセントは自分の椅子に座り机に置かれた書類に目を通した。
(穀物の買い付けは上々、南部製の食器も売上が上がっている。この辺は問題なさそうだ)
次に医薬品の書類に目を通した。
医薬品は始めたばかりとはいえ、この収益は良くない。自ら手を加えなくては…
澄ました顔で書類を読み返していたらいつの間にか机に紅茶が入ったカップが置かれていた。
「社長、お帰りなさいませ」
サリーナがトレイを持ち立っていた。
「長旅ご苦労様です、今月の収支は見て頂けたでしょうか、土地の権利書の手続きの方は七割は完了いたしました。来月末には全て完了する予定です。終わり次第、次のプランに移させていただきます。先方の方にもそう伝えます」
ヴィンセントはカップを取り紅茶を啜った。
全て計画通りだ。
「サリーナ、今月の医薬品の売上が低すぎる。原因は」
「はい、今流行り病に効く薬草が不足しており薬草自体が高騰しているとの事です」
「なるほど…」
顔色を変えずサリーナの話を聞きながら書類の山を目を通した。
「ロンザン製薬の提携の件は進んでいるか?」
「来月先方とカセドホテルで面談を予定しておりますが、先方はあまり乗る気ではなさそうです」
「分かった先方に会ったら
必ず
良い返答をさせよう。その前に休憩だ、昼食を頼む」ヴィンセントは書類を一旦読み終え机を片付けた。
「お待たせしました」
机の書類を整理し終えると既にサリーナがトレイに乗せて持ってきた。
「本日はエッグベネディクト、トースト、牛テールのスープ、ミルクティーになります」
サリーナは机にテーブルクロスを敷き綺麗に皿とフォークとナイフを並べた後、頭を下げ部屋を出た。
束の間の休憩だ、いただこう。その時だった。
イデスの怒号が表から聞こえた。段々近づいて来る。
「おいてめぇ俺を差し置いて進むんじゃねぇ」
「あんたに構ってる暇はないのどいて!」
「グフッ」
また
あいつ
か扉が突如開いて一人の少女が乗り込んで来た。
「ヴィンセント!あんた本当にいい加減にしなさいよ!」