第17話 傭兵稼業

文字数 1,282文字

拠点が見渡せる山道でトラックのボンネットにもたれて景色を眺めていた。

拠点の広場には自称一番の傭兵たちが拘束されている。

「ヴィンセントさん、お待たせしました」

現れた男は今にも自らの胸板ではちち切れそうな白シャツを着こなし、肩には長物の銃、黒のサングラスをかけてやってきた。

「アルバート報告しろ」

「拠点は制圧、兵士たちはほぼ無傷で拘束、武器兵器も鹵獲、こちらの損害は無し。上々です、まさに完璧と言ってもいいでしょう、私の上腕二頭筋の様に!」

自らの筋肉を見せびらす姿勢をとると我慢できなくなった胸のボタンが弾け飛んだ。

「おっと失礼、私の大胸筋が」

「これで何着目だ、鍛えるのはいいがお前のシャツ代だけで今月でいくら掛かったか」

ヴィンセントはため息をついた。

アルバート、我がイーター商会が誇る商品の一つ、傭兵部隊ガーコの隊長である。

多少頭が筋肉で埋まっているが礼儀正しい紳士で、戦闘技術、能力、リーダーとして隊をまとめるには相応しい男だ。

「あの兵士どもをどう思う、使えそうか」

「いえいえ全くですよ。基礎がなっていません。我々が拠点に潜入して無力化する際も銃声所がナイフ一振りもせずに大人しくこの麻酔銃でおねんねですよ、ヒヨコどころかまだ羽化もしてない卵ですよ」

「そうか、卵か」

「そして武器兵器は

もいいとこです。恐らくレガリスのお古を帝国が買って使えないと判断して奴らに買わせたのでしょう」

「だろうな、いかにもレガリスや帝国がやる手だ」

『マザー応答せよこちらチャーリー』

トラックに乗せた無線機が鳴る。

アルバートが無線機を手に取る。

「こちらマザー、どうした」

「兵士数名が目を覚ましました、隊長と名乗る男の話しだと兵士の人数は三十四名、拘束している人数と合います」

「あの隊長口が軽いな」

ヴィンセントは鼻で笑った。

「了解、俺が向かうまで警戒を怠るな」

アルバートは無線を切るとこちらに山道を猛進する車がやってきてドリフトをしてトラックに横着けした。

「使えるまでどれぐらい掛かる?」

「そうですね…全員卵ですので半年は掛かるかと」

「三ヶ月で使えるようにしろ。反抗するものはその場で処分しても構わない。お前に任せる、本場のレガリス仕込みの腕前を見せてやれ」

「ははは、任せてください。弱音を吐けない程虐めて虐めて虐め抜いてやります」

相変わらず力業だ、だかそれでいい。ヴィンセントは車に乗り込んだ。

「後で報告書と始末書を出せ。何が完璧だ、暗視ゴーグルの起動音が耳障りだ、隠密行動に支障が出る、後でコレッティアに改良を頼むべきだ」

「流石はヴィンセントさん、細かい所まで気づくとは」

アルバートは感心していた。

「アルバート、我々にはただ一つのミスも許されない、決してだ。肝に命じとおけ」

そう、決してミスは許されない。

「ええ、分かりました」

アルバートはサングラスをかけ直し車のドアを閉じた。

「お帰りなさい!書類です!」

パムが運転席から元気よく笑顔で言った。

ヴィンセントが座った後部座席の隣に書類の山が積まれている。書類の束を手に取り目を通した。

「パム、出せ」

車は山道を逸れて全速力で山を下った。




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登場人物紹介

ヴィンセント

黒のハットとスーツを着こなし右手に手錠で繋がった金属製の鞄をを常に持つイーター商会の代表取締役社長

目的の為なら手段をいとわない

彼の出生、過去、目的は不明

ミレーユ

世界一の商人を目指す少女

勝ち気で負けず嫌い、商売で困っている人たちを助けてあげる事を目標にしている

非情な商いをするヴィンセントを敵視している

一人で店を切り盛りしているマリーンを尊敬している

イデス イーター商会番頭 幹部

がさつで粗暴の荒いが義理人情に厚い

一度仲間だと認めた相手には優しいが、初対面の相手にはガンを飛ばすなど怒ると手がつけられない狂犬

常に店番をしている

ヴィンセントの命令には絶対服従

アルバート イーター商会傭兵 幹部

イーター商会専属の傭兵部隊「ガーコ」の隊長

屈強な体格と顔の傷を隠す様にサングラスを掛け、見た目は近寄りがたいが誰にたいしても優しく心優しいジェントルマン

己の肉体と隊員たちに愛のムチと言って日々、肉体と戦闘技術を鍛えた後甘い物を食べるのが日課

ヴィンセントに対して絶対的な信頼をよせている

ユース イーター商会霊媒師 幹部

中性的な容姿と顔立ちで初対面で会った相手は男か女かわからないほどの美青年

華奢な身体のわりに自分の背丈ある木片で作られた張りぼての棺を背負っている

誰にたいしても物腰が柔らかく、礼儀正しい

ヴィンセントには絶対的な忠誠を誓う

コレッティア イーター商会技術開発 幹部

海外から来た科学者兼技術者

極度の対人恐怖症で常に自分の研究室にひきこもっている

滅多に顔を出さないので商会内でも彼女の存在を知るものは少ない

彼女の知識・技術は今の帝国を遥かに凌駕する程

ヴィンセントには絶対的な信用を寄せている

サリーナ イーター商会社長秘書

ヴィンセントと社員のスケジュール管理、資料作成管理、時にはヴィンセントの留守の間社長代理を勤める

仕事意外の会話は一切せず、機械の様に仕事をこなす

社長のヴィンセントの指示には必ず従う

パム イーター商会運転手

いつも笑顔が絶えないイーター商会の専属運転手

十代ながら天才的な運転技術を持ち、目的地まで最速、安全に飛ばす。

マリーン コレリア雑貨店店主

老舗雑貨店を切り盛りしている魔女

主に薬草や医薬品、日用雑貨を中心に取り扱う

ヴィンセントとは長い付き合い

ユベール・ロッシュ・Jr.  探偵

ヴィンセントの義理の叔父

帝都の郊外で名前のない探偵事務所を運営している

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