第13話 鳥居とボンド

文字数 669文字

 折角建てた鳥居も2年後、一部腐りだした。「早すぎるんだよ。安物の木を使ったな」。しかし建ててもらったからには「10年は持たすのが私の責任である」と鳥居に宣言した。
 腐った部分をノミで削り落とした。次は当木の製作だ。本職でもないのでぴっちりした形は作れない。空いた隙間は木工ボンドで埋めれば目立たないだろう。
 通りの坂道に、大工が趣味で建てているミニ家屋がある。屋根瓦と壁や玄関はあるが、奥行き
半間の家である。住んでるのではなく「自分の腕前を見ろと」誇示しているのだ。たまにやって来るこの男、もう高齢なのに厄介者だ。酒飲んで来ては、大声で怒鳴る。通りの車にわけもわからない事を大声で怒る。暴力を振るう訳でなし、偶にしか叫ばないので近所の人は警察へ通報しない。
 私は脚立の上で、鳥居の腐れ部分の充てん作業をしていた。後ろに人の気配を感じた。サング
ラスを掛けた作業着の厄介な親父が立っていた。知らん顔をしていると、意外と優しい声で「稲荷の修理をしているのだな」と訊く。「見りゃ分かるだろ」と言いたいが「まあそうです」と答えた。大工なら手伝えば良いのにと思った。
 「人のためにしているんだな。良いことだよ」と言って去って行った。職人で良い腕して何軒も家を建てたのだろう。模造家を見ると手が込んでいる。柄が悪いのが玉に傷だ。通りがかった小母さんが大工が畑で野菜を作るのを見て話しかけた。返答がすごい「お前らにやるために作ってんじゃない」小母さんは黙って立ち去った。こんなバカなじ爺がいるんだよ。
 「これで世の中通ってきたのか」いろいろな人がいる。
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