第7話 手入れした甘夏カンは美味

文字数 735文字

3月始め「家の庭になった甘夏カンです。食べて」と頂くことがある。大きく立派なものだ。
厚い外皮とスポンジのような中果皮を剥き、薄皮を取り去り、手間をかけて果肉を口に入れる。 「ん?甘さもボケて、パンチの無い味。苦みも強い」。「こんなもの食べられん」奢った口が言う。
 苗木は安く、木は育ちやすく実もなりやすい。家庭で手入れしないミカンで美味しいものは少ない。昔は、どこの家にも夏ミカンの木はあった。食料の無い時代は大切にし、肥しをやりまめに手入れもしていた。酸っぱく苦いけれど甘味もあり貴重な存在だった。
 ミカンは育て方により味が全く違う。改良された甘夏カンに、愛情の声をかけ、肥しを与え太陽が隅々まで行渡るよう不要な枝を切る。
 春枝に白い花が5月に咲く。芽をつけ、小さな実がなり、少し少しづつ育っていく。冬前に緑のピンポン球の大きさになり可愛い。表面はぶつぶつし固くて嘴では破れない。一部が萌黄色に
なり、日を増すごとにオレンジ色になってくる
 ソフトボール位の大きさになると内部で味が熟れていく。2月初め、寒い強風に叩かれ乾燥し
たヘタからポロリと地面に落ちる。収穫の時期である。
 今年は甘夏柑が100個取れた。収穫した甘夏は最高の味だ。皮むきは大変だが、苦みは最初少し残るけれど成熟すると甘さと酸いさで中和され、3味一体がハーモニーを奏でる。
 外・中菓皮と薄膜をむき、皿に盛り上げる。薄オレンジ色で瑞々しく、クシャと噛む触感もいい。口いっぱいにジューシーで甘酸っぱい甘夏柑の香りが広がる。
 知り合いに4個上げたら「妻がバリバリと2個一気に食べてしまい、びっくりした」そうだ。
摘果後のご褒美に堆肥、牛糞、菜種、化成肥料を混ぜ、根の周りにお礼肥えとした。
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