第8話 スイートホームとウッドデッキ

文字数 642文字

 子供が幼いころ、ローンを組んで夢のマイホームを建てる。庭に芝生を植え子供の遊ぶブラン
コやバーべキュー炉を作る。ウッドデッキで夕食を楽しむ。スイートホームの夢は膨らむ。
 小・中学までは親に従い、家庭は幸せに溢れている。子供は瞬く間に大きくなる。三輪車が自
転車に、短パンがGパンに、ピアノが受験で埃を被る。子供が巣立ち、夫婦だけの生活が始まる。
 夕食時、テレビを見て無言で腹を満たす。味気ない雰囲気に変わってしまった。ウッドデッキ も使わず手入れもなく、崩れ落ちてしまっている。芝生は草ぼうぼう木々は荒れ放題に伸びる。
 最近の若夫夫婦は家を建てても駐車場の為、庭なしでコンクリで埋め立てる。楽ではいいが
無機質な性格の子供が育ってしまう。世の中が変わった方向へ行ってしまう。
 昔の家は庭に石や植木や花を植え、休日には手入し、花や鳥、木々の成長を目で楽しんだ。
夏、子供が訊いた「庭に小さな穴が沢山あるけど何?」セミが何年も土中で過ごし、晴れ舞台に
顔を出す。自然に対する感性が失われていく。メジロも梅の蜜が無い庭は敬遠する。
春の息吹や、草花が新芽をつけた喜びを、子供たちは身辺に感じられなくなった。
 コンクリは酸性雨で汚れ、心も薄汚れていっている。「年寄りは余計なことを言わず、年金貰って引っ込んでいろ」と若者に言われそう。
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