第12話(1) 河原の憂鬱
文字数 1,582文字
「くっそぉぉぉ‼」
六月のある日の夕暮れ、時代錯誤感のあるロングスカート姿の美少女、龍波竜乃 ちゃんが河原で吠えた。
「虚しくなるから吠えるの止めなさいよ……」
そんな彼女の様子を見て、短めのツインテールがトレードマークの美少女、姫藤聖良 ちゃんが呆れ気味に呟く。
「くっそぉぉぉ……‼」
「小声で言えば良いってもんじゃないのよ!」
「じゃあどうすりゃ良いんだよ、ピカ子! この気持ちをよ!」
「アタシに当たらないでよ!」
「そりゃあピカ子は放電できるからいいだろうけどよ!」
「出来ないわよ!」
「あ~もう!」
竜乃ちゃんが自分の髪を掴んでぐしゃぐしゃにする。綺麗な髪が傷んでしまってはいけない、そう思ったお団子頭が特徴的な私、丸井桃 は気が付くとこう呟いていました。
「受け入れるしかないよ……」
「ビィちゃん……?」
「桃ちゃん……?」
「私たちの挑戦は終わった、敗北を受け入れなきゃ……」
そう、私たち仙台和泉 高校サッカー部は『20XX年度 第XX回 宮城県高等学校総合体育大会サッカー競技』の準決勝で敗れました。簡単に振り返ってみると、二回戦で絶対女王常磐野 学園を下す大番狂わせを起こした私たちは続く準々決勝、仙台山背 高校戦に臨みました。常磐野戦で退場処分を受けて、聖良ちゃんが出場停止という状態でした。彼女の持ち味である鋭いドリブルという武器を欠き、攻めあぐねる私たちでしたが、菊沢輝 さんの正確な左足から放たれたコーナーキックをヴァネさんこと、谷尾 ヴァネッサ恵美 さんがヘディングで相手ゴールに叩き込んで、試合の均衡は崩れました。同点に追いつく為に前がかりになった相手の守備ラインの裏側に空いたスペースを突き、途中出場の白雲流 ちゃんが自慢の俊足で抜け出しました。相手を引きつけてから流ちゃんが出した横パスを竜乃ちゃんが流しこんで、追加点。2対0で勝利した私たちは準決勝、ベスト4進出を決めました。
「強かったわね、相手……」
「うん……」
迎えた準決勝、令正 高校戦。令正も常磐野と並び、県内4強の一角に数えられる強豪校です。聖良ちゃんも戻り、ベストメンバーで臨んだ私たちでしたが、連戦の疲労か、チーム全体の動きが重く、思うような試合運びをすることが出来ませんでした。対照的に令正は終始落ち着いたゲーム展開を見せ、チャンスを確実に決めてきました。終わってみればスコアは0対3、私たちの完敗でした。
「常磐野に勝ったことで私たちに慢心があったのかしら?」
「それも無いとも言い切れないね」
聖良ちゃんの呟きに私は同調しました。
「……とにかく明日は休み明けで初めてのミーティングがあるから、具体的な敗因分析はそこで話があると思うよ」
「ミーティングか、出たくねえなあ~」
竜乃ちゃんがしゃがみ込んで、情けない声を出しました。
「竜乃ちゃん……さっきも言ったけど、受け入れなきゃ、現実を。そうでないと前に進むことは出来ないよ」
「分かっちゃいるけどよぉ……このチームでサッカー出来るのは最後になるんだろ? 折角楽しくなってきた所だってのによ……」
「……」
竜乃ちゃんの言葉に私は何も言うことは出来ませんでした。そうです、夏の大会が終わったということは、最上級生である三年生がチームを引退するということです。学生スポーツの常とはいえ、やはり寂しいものです。腹黒い……もとい思慮深いキャプテンの緑川美智 さん、冷静な副キャプテンの永江奈和 さん、飄々としたサイドバックの池田弥凪 さん、何故かアフロヘアーの武秋魚 さん、攻守のつなぎ役である桜庭美来 さん、彼女たち五人とお別れしなければならないのです。令正戦後のロッカールームで秋魚さんは泣いていました。約二か月半という短い間でしたが、チームメイトとして共に戦ってきただけに、離れ離れになるのは辛いです。私はどこか陰鬱とした気持ちで翌日のミーティングの時を迎えました。
六月のある日の夕暮れ、時代錯誤感のあるロングスカート姿の美少女、
「虚しくなるから吠えるの止めなさいよ……」
そんな彼女の様子を見て、短めのツインテールがトレードマークの美少女、
「くっそぉぉぉ……‼」
「小声で言えば良いってもんじゃないのよ!」
「じゃあどうすりゃ良いんだよ、ピカ子! この気持ちをよ!」
「アタシに当たらないでよ!」
「そりゃあピカ子は放電できるからいいだろうけどよ!」
「出来ないわよ!」
「あ~もう!」
竜乃ちゃんが自分の髪を掴んでぐしゃぐしゃにする。綺麗な髪が傷んでしまってはいけない、そう思ったお団子頭が特徴的な私、
「受け入れるしかないよ……」
「ビィちゃん……?」
「桃ちゃん……?」
「私たちの挑戦は終わった、敗北を受け入れなきゃ……」
そう、私たち
「強かったわね、相手……」
「うん……」
迎えた準決勝、
「常磐野に勝ったことで私たちに慢心があったのかしら?」
「それも無いとも言い切れないね」
聖良ちゃんの呟きに私は同調しました。
「……とにかく明日は休み明けで初めてのミーティングがあるから、具体的な敗因分析はそこで話があると思うよ」
「ミーティングか、出たくねえなあ~」
竜乃ちゃんがしゃがみ込んで、情けない声を出しました。
「竜乃ちゃん……さっきも言ったけど、受け入れなきゃ、現実を。そうでないと前に進むことは出来ないよ」
「分かっちゃいるけどよぉ……このチームでサッカー出来るのは最後になるんだろ? 折角楽しくなってきた所だってのによ……」
「……」
竜乃ちゃんの言葉に私は何も言うことは出来ませんでした。そうです、夏の大会が終わったということは、最上級生である三年生がチームを引退するということです。学生スポーツの常とはいえ、やはり寂しいものです。腹黒い……もとい思慮深いキャプテンの