第1話

文字数 906文字

随分と昔の話です。
ですので、記憶が不確かですが、そこんとこご了解ください。

都内で、手塚治虫先生の講演会がありました。
先生が亡くなる2年前くらいの時期だったと思います。
カルチャーセンターの教室だったので、満席といっても30人~40人くらいの参加者でした。
教室くらいの大きさの会場でした。

講演会の最後に、手塚先生が
「何か質問はありますか?」
と、参加者に声をかけてくださりました。

勢いよく手を挙げたのは、初老の男性でした。
「先生の著作は素晴らしいです」

その人は手塚作品がいかに素晴らしいか、ひとしきり賛美した後

「漫画には不健全、未成年者に良くない影響を与える作品がありますが、
私は規制すべきだと思いますが、その辺、先生はどうお考えですか?」

手塚先生の顔色が変わりました。
穏やかな笑顔が一瞬に怒りを抑えた表情、額に筋張りが浮かび上がっています。
怒鳴る、いや、かろうじて抑えているといった表情でしょうか。

「我々には表現の自由があります。
この作品がよくて、この作品が悪いということはないのです」

「いかなる場合も、規制することは断固反対です」
手塚先生は怒りをこめて、大きな声で言いきりました。
質問した男性は、あっけにとられています。

その時の手塚先生の怒りが、私にとって本当に印象的でした。
表現者としての矜持を持ち、文化を発信、創造する、牽引する立場である人の怒り。

質問者の発言は、異端審問と焚書坑儒・・・ですね。
歴史が物語っています。

あの時、漫画の神様、伝説の手塚先生と同じ空間を共有できたのも僥倖ですが、
先生の表現にたいする姿勢を生で感じることができたのは、スゴイことだったのではないかと。

これから「フランス書院」の出版物について、書こうと思っていた時、このエピソードを思い出したのです。

補足 (┬┬﹏┬┬)

フランス書院文庫のえっくすが、めちゃおもしろい!!
トリビアですかぁ!
ざっとあげると

オーストリアの500年前のお城にあったぱんてぃ(ひも)とか(写真あり)
AV業界秘伝のレシピ
フランス書院文庫における「貧乳」表現一覧
クレオパトラの死後問題
ユニコーンを捕まえる方法
まだまだあります。
さすが老舗、視点が違うね!!グッジョブ!



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