第4話

文字数 689文字

 その夜、僕は自ら部屋を出た。夕食をとっている食事の手がとまり、両親は驚いた顔のまま、
「どうした、健太。一緒にご飯食べるか?」
「あら、健太……どうしましょう、すぐにご飯を用意するわ」とお母さんが席を立とうとするのをさえぎり、
「ううん、夕食は部屋で食べるから。それよりお父さん、話したいことがあるんだ。あとで僕の部屋にきてほしいんだ」
「おう、そうか。わかった。食べたら行くから、健太もご飯をちゃんと食べろ」
「うん、わかった」


 何ヶ月ぶりかで両親のいる時間に部屋から出たのだ。両親が驚くのも無理はない。
 健太は部屋に戻ると、その様子を思い出しふと笑ってしまった。胸のつかえがおりた気がして、夕食は残さず全部食べた。

 三十分ほどしてお父さんはやってきた。

 (トントン)

「おい、健太。入るぞ。ほら温かいお茶だ」と湯呑みを手渡された。これで気分も落ち着いてゆっくり話ができるということだろう。お母さんの心遣いを感じた。

「話ってなんだ?」
「うん、どこからどんなふうに話をしたらいいのか実はとても迷っているんだ。でも、順番に話すから、僕が頭がおかしくなったんじゃないかとか、思わないで最後まで聞いてくれる?」

 そして、月明かりの明るい夜に脱出して、その目で見たもの、感じたことを小学生の僕にありったけの語彙を使ってお父さんに話した。

 お父さんは時折、窓の外に視線を移してみたり、ちょっと戸惑ったような表情を浮かべて一点を見つめたりしながらも僕の話を最後まで聞いてくれた。
 一通り話し終えると、少しの沈黙のあと、お父さんは思いもよらない打ち明け話を始めた。
 
 それは僕の想像を絶するものだった。
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