第23話

文字数 1,839文字

 大学生活はとても充実したものだった。学生でありながら社会参加もしつつ、サークル活動も加わり自分磨きに拍車がかかっていった。

 そんなある日、僕に一通の封筒が届いた。送り主はAISとだけあった。

 この送り主に僕はピンときた。小学生のとき、確かお父さんが、いつかAISという組織から連絡があると言っていたのを憶えていた。内心、その話を聞いた時から、この瞬間を待ち望んでいたのだ。僕は封筒を開ける前にお父さんに連絡した。

[AISから封筒が届いた]

 すぐにお父さんから返信がきた。

[そうか。きたか。今夜、時間あるか?]

[うん]

[外で会おう。新宿駅前のスタバで夜七時、どうだ?]

[OK。じゃまたあとで]

 夜七時ちょっと前に僕はスタバに着いた。するとお父さんはすでにコーヒーを飲みながら、一番奥の目立たない席で僕を待っていた。

「悪い、遅くなった」
「いや、お父さんが早く着いたんだよ。ところで、早速本題だ。開封してみろ」
「うん、緊張するな」

 封筒の中にはNo24と書かれたシルバーのカードが一枚と小さい文字で書かれた規約の冊子が入っていた。
「何これ?」
 僕は冊子をめくりながら聞いた。
「昔から変わらないな。今時、紙の規約って……まぁ、歴史ある集団だから仕方ないな。No24というのはAISのメンバーの番号なんだ。家系で一つの番号だから、お父さんもNo24のカードを持っている。おじいちゃんもカードを持っていたが
六十歳で返却しなければいけないルールなんだよ。お父さんもあと四年で返却しなければいけないのさ。不思議と六十歳くらいになるとリボーンが見えなくなるんだよ。何故なのかはいまだに解明されていないが。だが、若いAISのメンバーを増やしていかないとこの組織の存続は途絶えてしまうからな。というわけで昔から引き継がれて今も成立しているというわけだ」
「このカードを持っている意味はあるの?」
「このカードのQRコードを携帯でスキャンし個人情報を登録しなければならない。登録すると全国のメンバーからのヘルプ要請が情報として日々入ってくるようになるのさ。お父さんがいろんな経験を積んでおけと言ったのは、ここに意味があるのさ。いろんな職業や特技が助けにつながるというわけだ」
「なるほど。そのヘルプに応えることで案件に自分なりの活躍が期待され協力できるということなんだね」
「そういうことだ。だからお父さんにはたくさんの知り合いがいるから任せろって前に言っただろう。こういうことなのさ」
「その有能なメンバーの一員として認められたということなんだね」
「そういうことだ。メンバーの認可には系列のメンバー、一人の承認が必要なわけだ。もうすぐ健太も卒業だし、一昨日、お父さんが余裕をもって申請しておいたのさ。案外早く承認がおりたな。それだけ今までの成績が認められたということだぞ。自信を持て、健太。これからは一人で背負い込むな。周りを頼れ。要請で動く前には話し合おう。No24の成績にかかわるからな。わかったな」
「うん、わかった。詳しいルールはおいおい規約を読んで理解するようにするよ」
「じゃ、帰るか」
「うん。お母さんには家の前で偶然会ったことにしておこう」
「そうだね」

 こうしてAISのメンバー入りが決まり、健太はこれからやってくるいろんな出来事を想像しワクワクした気分になっていた。

「ところでAISって何の略?」
「そこ、気づいちゃったか……気になるよな…‥言いにくいんだがな、聞いて驚くなよ」
「なんだよ。もったいぶるなよ」
「…‥あなたの命、救うでござる……の略だそうだ」
「あなたの……命…‥救うでござる……?AIS……えーっ、大ウケだな。時代を感じるなぁ」
「お父さんもおじいちゃんに聞いたときにはずっこけたさ。でもそれだけ歴史ある組織だということなんだよ。今はあなたの命救います、の略ってことだな」
「えーっ、どっちにしてもダサすぎるでしょ」
「でも事実だから仕方ないだろ。AISといっておけば何となくカッコいいだろう?」
「そうだね、じゃ、AISのメンバーということでこれからもよろしくお願いします」
 お父さんと夜道を笑いながら歩いて帰った。


 その後の僕はーー

 もちろん実績を積んで小学校の教師になってーー
 リボーンを見つけたら解決するべく人助けに励む日々を送っている。

 もしかしたら隣にいる仲のいい友達も、愛する恋人もAISのメンバーかもしれない。

 そして十五歳以下のきみは近い将来、リボーンに出会うかもしれない。
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