第8話

文字数 1,107文字

 その夜、僕は、自分一人の力ではどうすることもできずにお父さんに助けを求めた。
 全ての話を真剣に聞いてくれて、お父さんは僕にこう言った。
「お父さんにいい考えがある。お父さんに、この案件を預けてくれないか」
「ほんと?お父さんはすごいな……サトルにはなんて話せばいい?」
「じゃあ、お父さんが今から話すことを健太なりによく考えてサトルくんに話してほしい。いいかい?」
「うん」
「斉藤さんちは母子家庭だ。うちとは生活環境が全然違う。サトルくんのお母さんがどんなに一生懸命働いても家族で生活していくのはとても大変なことなんだ。我が家は共働きだから、子供二人をなんとか養えるが、斉藤さんちのことを考えると、サトルくんとおばあちゃんの二人、そして自分も入れたら三人分の生活をお母さん一人の収入でまかなっていくということなんだ。今、少しボケてきているというおばあちゃんの面倒を行政がみてあげれば……地域のみんなが支えてあげれば、少しはお母さんの助けになるんじゃないのかな。サトルくんもおばあちゃんもきっと今より心にゆとりができるはずだ。言ってる意味がわかるか?幸い、お父さんはそのあたりに詳しい。力になれると思うよ」
「そうなんだ……じゃ、サトルにはなんて……」
「そうだな。行政サービス訪問ということで、それとなくサトルくんのお母さんに会ってみるよ。きっとうまくいくと思うよ。お母さんだって子供に辛い思いをさせてしまっていると気づいているはずだから」
「えっ、お父さんが会ってくれるの?」
「そりゃそうさ。特殊能力を持つ人間は人助けに利用できる資格を取得したり、いろんな職業の知り合いがいることーーこのことがとても役に立つんだよ。人の力になりたいのなら、健太も自分にいろんな力をつけることだな。健太もそのうちにわかるさ。いかに努力することが大事かってことが」
「そうなんだ。僕には重大任務がこの先、たくさんあるってわけだ……そして、ふさわしい人間になるために勉強することがたくさんある……ということだね」
「そういうことだ」
「じゃ、サトルには、いい方向に向かうから、お母さんの様子をみていて、とだけ言っておくよ」
「この問題は子供だけじゃ解決できない。よく話してくれたな。これからもリボーンを見たら力になれるように頑張れよ。お父さんも応援するから。まぁ、お父さんもまだまだ勉強中だがな」

 僕はお父さんを誇らしく思った。

 今までひきこもっていたのは、僕の弱さだったと思う。
 でも、ひきこもっていたときに特殊能力が芽生えたということは、あの時間が無駄ではなかったと考えることにした。むしろ、あの時間がなければ僕は成長できなかったと今では思っている。
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