2023年12月10日(日) 趣味の関門② もう本しかない

文字数 2,795文字

片付けのエンジンがかかるのが夜
   ↓ ↓ ↓
夜中~朝方まで作業
   ↓ ↓ ↓
寝るのが遅いので朝起きるのも遅い(というか昼近くに起きる)
   ↓ ↓ ↓
片付けを始める時間が遅くなる

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悪循環を繰り返している。

奥の四畳半の片付けの続き、押入れの下段は襖の真ん前をふさいでいるものをやっつけないと着手できないので、四畳半の奥に進んでいく。ジャングルの奥地に向かうくらいのこころもち。

でも、もう、片付けるものが本しかない。

四畳半を埋め尽くすかなりの部分に手を入れられて、今室内で場所を取っているのはゴミの日が来たら順次部屋から出して捨てるものたちばかり。この部屋で片付けられるものといったら、(押入れの下段を除いては)もう本しかない。
本が好きで読書が好きで本屋が好きで社会人経験の大半を本屋勤務に捧げた私が本の処分をどうやるというのだ。処分? 処分って何? わからん。

……と思っていたのだが、やり始めるとテンションがぶちあがってしまい。

ずっと本棚の前に本がドン積みになっていたので、自分の本棚の正面に立てず、とっくり見つめること自体が久しぶりになっていた。逆にこういうの、愛書家のすることではない。本に対して親切ではない。私はくずだ。
しかし、久々に見つめた本棚の、なんと心躍ること! なんだこの面白い本しか入っていない棚は。私の棚なんだからそりゃ私のご機嫌取るにはテキメンのラインアップなのだが、楽しすぎて夜中の三時にせせら笑いながら積んだ本を確認し、積み直し、棚の隙間に入れを繰り返した。ブックカバーかける派かつ読後も外さない派なので、表紙をめくらないと本の正体がわからないのがちょっと手間ではあるが、その一冊いっさつ確かめる作業がたまらん楽しかった。

過去にこのデカい本棚を入れたとき、本のサイズに合わせてその都度棚板を入れながら蔵書を収めていたのだが、どうやっても本が収まりきらないことが途中でわかったので、その時点で棚板と本を入れるのをあきらめた。ので、まだ本を収める余剰が少しだけ残っていた。余っていた棚板をまた少し入れ、床に積んであった本をいくらか並べた。本棚のそばに置いてある三段のカラーボックスにもとりあえず分類もせずにドカドカと本をぶち込み、四畳半の床の可視面積がぐっと広くなった。わぁい! 

前職に勤務していた頃、通勤先が大通公園近辺だった時期、昼休みになるといそいそと地下街の書店に足を運んでいた。あまり規模の大きい店ではなかったのだが割と棚が面白くて、創元推理文庫の棚の前で休憩時間の半分近くも消化してしまって大慌てで昼食を食べに行ったりすることもしょっちゅうだった。当時買ってまだ読めていない本も結構出てきている。持ち運びするつもりで選んでいたから全部文庫本だ。
それから、別の地下街の書店で買った『ずっとお城で暮らしてる』も出てきた。これは棚に収めず枕元に積んで、寝るときとか起きたときとかに読む。
この地下街の本屋二店は、ここ一・二年のうちにどちらも閉店している。どちらもいい本屋だったなぁ。

本屋なんて、デカければ蔵書の数は揃えられるけれど、だからって欲しい本が必ず見つかるわけでもない。かつて私が勤めたデカい本屋は発注も棚出しも流れ作業的だったので、まるで入ってきた本を並べるだけだった。それでは棚はあんまり面白くならない。
誰かが心血注いで編んだ本だから、数があるだけでもすごくパワフルなんだけれど、魅力があってわくわくする本屋の棚にはそれでは足りているとは言えない……、と思っている。

ちょっと話がそれたが。
昔集めたパートワーク誌のマガジンと、廉価版のコミックスはこれを機にお別れをすることにした。廉価版って、コンビニとかで売っているペーパーバック形式の冊子のこと。単行本があれば重複して持たなくても大丈夫かな、というタイトルは手放すことにした。積み上げて紐でまとめて、処分するかたまりが四つできた。

それから、本の山の真ん中にあらかじめ段ボールに入れて分けてある山があったのだが、これは過去の私が一回手放そうと考えた本たちの箱だった。
私はジャケ買いとか「今日何か一冊買って帰ろ」みたいな勘が働かないタイプで、「読んだら好きになるだろ! たぶん!」みたいな力技も通用しないことが結構ある。初対面の本と打ち解けるのがあまりうまくないようだ。
そうやって買った本たちは、偏愛・狂愛を注ぐ本とはちょっと思い入れが異なるようで、あまり嘆かずにお別れを決めることができた。元から箱に入っていた分に、今日整理した分から追加さえできた。たったひと箱手放すだけでも、私にしては結構大きい出来事だ。

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本のあるあたりを整理し始めると出てくるのが、知人作・自作の同人誌。イベントで買ったものもあるが、オタク歴が長い割に紙の本はあまり持っておらず、全部合わせて二十冊いかないくらい。同人誌は特に処分するほどではなかったが、レインボーな便箋とかはさらばした。懐かし……
紙類は古紙回収に出すことも多いが、こういうものは全部外から見えないように配慮するなどして燃えるゴミに出す。シュレッダーにかけられるときはそうする。

ちょっと怖気の走る話なのだが、昔『古紙回収に出された同人誌』が回収業者で処分されずに我が家に譲られてきたことがある。
買い手が同人誌を手放すとき、破ったりシュレッダーにかけたりせず、最終的に焼却されるゴミに混ぜるのでもなく、リサイクルに出したらしい。ところがリサイクル業者がそれをピックアップして自分のものにしてしまい、後にうちに流れてきたという経緯だった。
親もオタクで同人誌の存在や内容の傾向を大体知っていた私は、それが公式に出版されたコミックスとは別物だとわかった上で受け取ったのだが、今思うと描いた人が心底困るやつだ。捨て方は考えようと思ったし、手放すときは一考してくれと思ったし、業者もちゃんと仕事してほしい。持ち主が手放したものだからって、拾っちゃダメじゃないか。

知人から本が郵送されてきたときの手紙や封筒も出てきたが、一人どうしても誰だったか思い出せない人がいる。見覚えのないハンドルネーム。誰だっけ……手紙の文章の中に『御国』って単語があるから、たぶん『ヘ●リア』で遊んでた頃の知り合いだと思うんだけど……超短期間だったし全然覚えてない……

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そんなこんなで、本でテンション上がってアドレナリンがどぱどぱ出た結果、本の片付けも相当進んだ上、朝の四時半に空腹を覚えて眠れる自信を失っている。
少しくらいは寝よう。履歴書と職務経歴書も作らなければ。

12月11日の記録 おわり
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