第21話

文字数 341文字

不倫は自分でケジメをつける。その二人の人間を結びつけるものはただ一つ、その肉体だけ。 

それが専門家の見解だ。

けれどもその後も、奥さんが出産した後も、私たちはあいも変わらず何度もベッドで抱き合った。なぜかは重要ではなかった。どこかで感情が薄れ、もうその頃には欲求をみたそうとするただの情事になってしまっていた。彼は毎回夜中に帰っていき、そのうしろ姿からは空虚感や孤独感が漂っていた。いつくるかも知れない彼がきた次の日の昼間はずっとうとうとしていたのを覚えている。

彼との関係が将来にどんな影響をもたらすのか、もうわからなかった。変なもんだな、と私は思った。何かが失われてしまったのだ。でもこんなことを言ったからといって彼を好きなのは変わらなかった。気がつくと、私は二十二歳になっていた。
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登場人物紹介

今の私

あの頃の私

そして、あの頃の彼

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