第16話

文字数 367文字

本当に好きになった人からは離れていくような、そんな予感めいたものがあった。それは、より自分だけのものにしたいためかもしれない。孤独な自分の運めいは自分でコントロールしたかった。接近しすぎると、自分でコントロールできなくなる。

あなたの奥さんに勝つには、死ぬしかないんじゃないかな。そうすれば、あなたの中で私は永遠になるでしょう?違う?

私はそんなふうに理屈をこね、彼の表情をうかがった。自分でもうさんくさいものだった。けど、そう答えたとたん、彼の手は背中にくいこみ、胸は息もできないほどきつく締めつけられていた。「どうなってもかまわない」と彼は言った。愚かしいことかもしれないけど、私も彼の首に腕をからめ、嵐のような情熱に身を任せた。今ならまだ、引き返せる。そう自分に言い聞かせながら遅すぎることがわかった。なぜならもう私は恋に落ちてる。
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登場人物紹介

今の私

あの頃の私

そして、あの頃の彼

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