第12話
文字数 495文字
彼の方から電話をかけてこないかぎり、私の方からはかけることができなかった。なぜなら当時は携帯電話がなかった。あるのは固定電話と公衆電話だけ。
彼は自分の欲望には忠実だった。
なのに、今日は違った。私がしたいと言った。
恥じらいは無くしてしまい、同時にこれまで経験したことがないほど女らしい気持ちにもなり、突然、突拍子もなく、わき上がる官能のうずきに、「やらせてあげるから来て」と、彼をけしかけていた。たちまち「今日は無理だよ、来週にしよう」彼は喉をごくりと鳴らして答えた。
「私が、今からタクシーで行くから」
はっきり言ってバカなことを言ったと私は悔やんだけど、とにもかくにもまもなく会うのだから、自分たちが何を求めているのかわかるだろう。
それにベッドの中では、愛し合うだけでなく、いろいろ語り合った。仕事のこと、政治のこと、本や映画のこと、果ては神様を信じているかまで。
だからこそ、一晩中彼と過ごしたいという思いと闘ってきた。
彼のことが片時も頭をはなれず、しきりに思いつづけ、会いたさのあまり、お店に電話してしまいそうだった。
そんなわけで、歌の歌詞のように、ダイヤを回して手をとめたこともあったわ。
彼は自分の欲望には忠実だった。
なのに、今日は違った。私がしたいと言った。
恥じらいは無くしてしまい、同時にこれまで経験したことがないほど女らしい気持ちにもなり、突然、突拍子もなく、わき上がる官能のうずきに、「やらせてあげるから来て」と、彼をけしかけていた。たちまち「今日は無理だよ、来週にしよう」彼は喉をごくりと鳴らして答えた。
「私が、今からタクシーで行くから」
はっきり言ってバカなことを言ったと私は悔やんだけど、とにもかくにもまもなく会うのだから、自分たちが何を求めているのかわかるだろう。
それにベッドの中では、愛し合うだけでなく、いろいろ語り合った。仕事のこと、政治のこと、本や映画のこと、果ては神様を信じているかまで。
だからこそ、一晩中彼と過ごしたいという思いと闘ってきた。
彼のことが片時も頭をはなれず、しきりに思いつづけ、会いたさのあまり、お店に電話してしまいそうだった。
そんなわけで、歌の歌詞のように、ダイヤを回して手をとめたこともあったわ。